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米FRB議長、段階的な利上げ擁護 大統領批判に言及せず

2018年08月25日(土)04時33分

[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 24日 ロイター] - パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は24日、経済回復の保護に加え、底堅い雇用の伸びの維持やインフレの抑制に向け、着実な利上げが最善の方策との認識を示した。

議長はワイオミング州ジャクソンホールで開かれている経済シンポジウムで講演し、段階的な利上げが依然適切となる理由について説明。「経済は力強く、インフレは2%の目標近辺にあるほか、大半の求職者は職を見つけている。所得や雇用の力強い伸びが継続すれば、一段の段階的な利上げがおそらく適切になる」と語った。

トランプ米大統領は今週、ロイターとのインタビューで、FRBの利上げ継続を「気に入らない」と批判したが、これについて議長の言及はなかった。

講演を受け、S&P総合500種<.SPX>とナスダック総合<.IXIC>が過去最高値を付け、ドル<.DXY>は通貨バスケットに対して軟調に推移した。短期金利先物相場では、9月と12月の利上げ予想が引き続き優勢だ。

また、フェデラルファンドとユーロドル先物が織り込む来年の利上げ回数予想は1回にとどまり、来年央までの金利レンジは2.5─2.75%の水準となっている。

今年のシンポジウムのテーマは「市場構造の変化」だが、パウエル氏は「完全雇用」や「中立金利」といった水準に関する考え方の変化が段階的な利上げの理由になっていると指摘。FRBが過去に完全雇用を誤って判断したことが1970年代のインフレ高騰を招いたとし、現在のFRBの見通しが正確であると捉えるべきではないと述べた。

議長は、FRBがこれまで景気過熱と早まった引き締めとの間で政策運営のかじ取りを行い、頼りとなる手掛かりさえ、移り変わるようなあいまいなものでしかないと認めた上で、慎重な対応こそが鍵になると強調した。

失業率がこれだけ低い中「なぜ連邦公開市場委員会(FOMC)は景気過熱やインフレの抑制に向けもっと急激に金融政策を引き締めないのか。インフレの問題を示す明確な兆候がない中、なぜFOMCは雇用の伸びや景気拡大の継続を阻害するリスクを冒してまで引き締めを行っているのか。現在の道筋である段階的な利上げは当該リスクを真剣に踏まえたFOMCの対応であると考える」と語った。

ただFRB当局者の全員が、議長と同じ見方を共有しているわけでない。

セントルイス地区連銀のブラード総裁は議長講演に先立ち、インフレ率が急上昇する兆しはなく、2019年は財政刺激措置の効果が薄れて成長が減速すると予想されることから、FRBは利上げを打ち切るべきとの見解を示した。

*内容を追加して再送します。

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