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焦点:株乱高下や香港ドル急落、荒れる市場が危惧する緩和修正
4月19日、金融市場はこのところ株価が乱高下し、米社債は軟調に推移、香港ドルが急落したほか、銀行の資金調達コストが上昇するなど荒れ模様だ。2017年5月撮影(2018年 ロイター/Kai Pfaffenbach)
[19日 ロイター] - 金融市場はこのところ株価が乱高下し、米社債は軟調に推移、香港ドルが急落したほか、銀行の資金調達コストが上昇するなど荒れ模様だ。
貿易戦争や地政学的リスクへの懸念、債券需給の不均衡などが原因とみられるが、市場関係者からは米連邦準備理事会(FRB)など主要中銀が量的金融緩和(QE)政策の軌道修正を図ったのが主な原因だ、との声が出ている。
中央銀行は2008年の世界金融危機後に記録的規模の債券を買い入れ、他の投資家は高い利回りを求めて高リスク資産に向かわざるを得なくなった。
シティグループ(ロンドン)のクレジット商品戦略部門ヘッド、マット・キング氏は「中銀による資産買い入れで、投資家は通常ならば手を出さない市場への参入を余儀なくされた」と述べた。
FRBが量的緩和で膨らんだ保有資産の縮小に着手し、日銀と欧州中央銀行(ECB)も資産買い入れを減らして金利が上昇したため、トレーダーはこれまでと反対の取引に動き始めた。
キング氏は「この数年間にわたってあらゆる金融商品の相場を押し上げ、ボラティリティを抑え込んでいた強力な要因、つまり中銀による流動性供給が徐々に巻き戻され、想定通りにボラティリティ(の上昇)と相場下落が起きている」と分析した。
ボラティリティは金融市場の広い範囲で上昇している。銀行の短期の調達コストであるLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)は、FRBの利上げと銀行短期債の相場下落を受けて、08年以来の水準に上がった。
JPモルガンによると、今年に入って発行された投資適格級社債の平均表面利率は、償還を迎える社債の平均を上回っており、通年でこの状態が続けば09年以来初めて企業の調達コストが上昇する。
株式市場は不安定で、ダウ工業株30種は2月に11年以来の下げを記録。香港市場では、香港銀行間金利と米国におけるLIBORの金利差が08年以来の水準に広がったことから、4月に入って香港ドルが急落し、香港金融管理局(HKMA)が介入に踏み切った。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのアナリストチームは「QEの勝ち組から負け組へと資金が動き始めた」と指摘。勝ち組には株式、欧米の高利回り債、新興国市場を、負け組にはキャッシュ、コモディティ、国債、ボラティリティを挙げた。
もっとも、中銀の政策変更が金融市場の混乱を招いたとの主張に懐疑的な見方もある。
米債券運用大手パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のマーク・キーゼル最高投資責任者(CIO)は、中国の成長率や貿易戦争、地政学的緊張の高まりなど海外絡みの懸念材料が社債にとって最大のリスクだと指摘。「中銀の政策変更は透明性が高いので、リスクのトップ3に入らない」と話した。
ただキーゼル氏は、世界的に物価上昇圧力が高まれば情勢が変わり、利上げペースが速まることもあり得ると付け加えている。
(Karen Brettell記者)