ニュース速報

ビジネス

アングル:米債利回り4年ぶり最高水準、海外投資家は買い控え

2018年03月03日(土)08時58分

 2月28日、米国債利回りが4年ぶりの最高水準に達しているが、欧州の投資家は為替ヘッジコストの高さやドル安への警戒感から購入を見送っている。写真は米ドル紙幣。シンガポールで昨年6月撮影(2018年 ロイター/Thomas White/Illustration)

[ロンドン 28日 ロイター] - 米国債利回りが4年ぶりの最高水準に達しているが、欧州の投資家は為替ヘッジコストの高さやドル安への警戒感から購入を見送っている。

米連邦準備理事会(FRB)による追加利上げ観測と、トランプ米大統領の積極財政を背景に、米国債とユーロ圏国債の利回り格差は拡大し、数年ぶりの大きさとなっている。

2年物で見ると、米国債利回りが2.23%なのに対し、ドイツ国債はマイナス0.52%で、スプレッドは実に275ベーシスポイント(bp)。2年物米国債利回りは過去5カ月で100bp上昇しており、先週は一時2.27%と、9年半ぶりの高水準を付ける場面もあった。

それでもドル相場はほとんど上昇しておらず、海外投資家が米国債の買いを控えていることが分かる。

FRBは年内に少なくとも3回追加利上げを行う見通しなのに対し、欧州中央銀行(ECB)と日銀の利上げは相当先になりそうなことを考えると、海外投資家の冷めた態度は一層際立つ。

シティの分析によると、欧州投資家が為替ヘッジ付きで米債を購入した場合に得られる追加利回りは昨年末に消滅してしまい、今年1─2月は大幅なマイナスが続いている。

ピクテ・アセット・マネジメント(ロンドン)のマルチ資産ポートフォリオマネジャー、シャニエル・ラムジー氏は「ヘッジコストは相当大きく、利回りはこれを優に超える水準まで上がる必要がある。米国債利回りがここまで魅力的になったのに、日本と欧州の投資家が買いを急いでいないのはこれが一因だ」と話した。

ファンド調査会社EPFRグローバルのデータによると、2月は米国外の投資家による米債購入が週平均90億ドルと、昨年の130億ドル超から3割ほど減っている。

欧州最大級の資産運用会社、アムンディのエリック・ブラード債券責任者は、ヘッジコストを差し引くと米国債利回りは欧州債と同程度になると説明。「このため、ドイツ国債と米国債のスプレッドが変化するシナリオが立てられない限り、そうしたポジション(ヘッジ付きの米国債購入)をとる誘因は大きくない」と述べた。

イタリアやスペインなど、欧州周縁国の国債利回りであれば、ドイツ国債よりもさらに魅力が増す。

ユーロ建てで見た米国債のトータルリターンを示すバークレイズの債券指標<.BCUSATSY>は、昨年10%下落した後、今年さらに4%下げ、欧州投資家の米国債買いが損を出していることが分かる。

欧州投資家にとってのヘッジコストである期間3カ月のユーロ/ドルのフォワードレートは、昨年第4・四半期から2倍に上昇している。

欧州ほどではないが、日本の投資家にとっても米国債投資のコストは上がっている。期間3カ月のドル/円のヘッジコストは2.45─2.60%と、2008年末以来の最高水準。つまりヘッジコストを差し引くとリターンは0.3─0.45%程度しか残らない。

日本生命保険の大関洋取締役(有価証券運用担当、CIO)は、ロイターとのインタビューで「米ドル建てのヘッジ外債の魅力は著しく落ちている。安定的なクレジットスプレッドが取れて、FRBの引き締めの最終局面でも(ヘッジコスト控除後)利回りが取れるものは投資を継続するが、新規で米国債をヘッジ外債で買うことは多分ない」と述べた。

1年にわたるドル安基調に歯止めがかかる兆しが見られないことも、海外投資家にとって頭痛の種だ。

ただ欧州の投資家と違い、日本の投資家にとっては、ヘッジコスト控除後でも利回りが小幅ながらプラスを維持している。

最近の米国債入札で外国人投資家の需要が高まったのは、このことが一因かもしれない。2月の入札では、外国人による10年債の購入は2016年5月以来で最大、30年債は3年ぶりの高水準となった。世界の金融市場が最近動揺したことで、米国債は安全資産としての魅力が増した面もある。

(Saikat Chatterjee記者 Abhinav Ramnarayan記者)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、26─30年に粗鋼生産量抑制 違法な能力拡大

ビジネス

26年度予算案、過大とは言えない 強い経済実現と財

ビジネス

中国国有銀行がドル買い、元が1ドル=7元に迫る

ワールド

フィリピン、今年の経常赤字をGDP比3.2%と予測
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 10
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中