ニュース速報

ビジネス

焦点:ゴーン氏、世界3強入りに照準 3社連合の効果拡大へ新布陣

2017年02月24日(金)00時18分

 2月23日、日産自動車のカルロス・ゴーン氏は4月から社長と最高経営責任者(CEO)の職を共同CEOの西川廣人氏に託し、会長としてグループ経営に集中する(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 24日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>のカルロス・ゴーン氏は4月から社長と最高経営責任者(CEO)の職を共同CEOの西川廣人氏に託し、会長としてグループ経営に集中する。ゴーン氏が率いる日産、ルノー、三菱自動車<7211.T>の3社連合が照準を当てる目標のひとつは世界販売トップ3入りの実現だ。日産再建でカリスマ経営者として脚光を浴びたゴーン氏の手腕が世界市場で真価を問われる局面に入りつつある。

日産が経営危機に陥った1999年、ゴーン氏は同社への出資を決めたルノーから最高執行責任者(COO)として送り込まれた。2000年の社長就任後、01年からはCEOを兼務、03年からは会長も兼務した。工場閉鎖に従業員の大幅削減、系列にとらわれない部品調達や購買コストの引き下げなどを断行、「コストカッター」や「再建請負人」の異名を取り、日産をV字回復に導いた。

「自分が育ててきた人材にバトンを渡す時が来た」――。ゴーン氏は23日の人事発表後、ロイターとのインタビューでこう述べ、日産の経営を西川氏に託す姿勢を鮮明にし、約18年間育ててきた後継者に自信をのぞかせた。17年度から始まる新たな中期経営計画の策定・実行も西川氏ら新たな経営陣が担う。

購買部門が長かった西川氏だが、ゴーン氏からは「結果を出す経営者としてのスキルを評価された」(日産幹部)。15年にはルノーの議決権問題で仏政府との交渉役として日産の経営の独立を勝ち取ったことも評価をさらに高めたとされ、昨年の三菱自への出資時に実務を任され、ゴーン氏とともに共同CEOにも就任、「社長への内定が当時から視野に入っていた」(同)とみられている。

現在ゴーン氏は日産とルノーで会長兼社長兼CEO、三菱自で会長を務める。4月以降も代表権のある会長として日産の経営を監督する立場のため、社長・CEOを退いても一定の影響力は維持するとみられている。ただ、今後は三菱自への経営関与を強め、グループ全体の戦略、連携強化に「多くの時間と労力をかける」(ゴーン氏)。

3社の連携強化について、ゴーン氏は「新しい技術を速やかに製品化して市場に届けるには一貫した考え方とパートナーシップが必要だ」と語り、電気自動車、自動運転、コネクテッドカーの領域での成果をどうあげるかが今後の課題だと指摘。同時に3社連携のシナジーの80%は購買、製品開発、生産の分野で実現できるとの見通しを示した。

15年度の日産の世界販売台数は約542万台。99年度から倍以上に伸ばしてきたゴーン氏。三菱自を傘下に収めた昨年は「世界販売トップ3入り」を新たな目標として自ら表明した。16年の三菱自を含むグループ世界販売は計約996万台。1000万台規模の独フォルクスワーゲン、トヨタ自動車<7203.T>、米ゼネラル・モーターズのトップ3を確実に猛追している。

ただ、11年度から16年度までの現行の中計「日産パワー88」で掲げた世界市場占有率8%、営業利益率8%の目標達成はまだ道半ばだ。16年第3四半期(4―12月)決算では世界市場占有率が5.9%だった。営業利益率は6.1%で、トヨタ自動車<7203.T>の7.7%、ホンダ<7267.T>の6.9%を下回った。

出遅れている東南アジアの強化をはじめ、3社間での事業の重複解消などグループ全体で取り組むべき課題も多い。トランプ米大統領の誕生など自動車業界を取り巻く環境の不透明感も増す中、三菱自も取り込んだ新たな企業連合を成長軌道に乗せられるかどうか。社長兼CEOを退いてもゴーン氏の経営手腕は引き続き試される。

(白木真紀、田実直美)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中