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ECB金利据え置き、下振れリスクで追加緩和に含み

2016年07月22日(金)04時34分

 7月21日、ECBは金融政策を据え置いた。写真は記者会見場を後にするドラギ総裁ら。フランクフルトで同日撮影(2016年 ロイター/Ralph Orlowski)

[フランクフルト 21日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は21日、金融政策を据え置いたが、著しい不確実性と景気見通しへの大きなリスクを強調し、追加緩和の余地を残した。

ドラギECB総裁は理事会後の会見で、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)決定による影響を見極めるのは時期尚早との考えを表明。

一方で、ブレグジットや新興国の成長弱含みがユーロ圏の景気見通しを下押ししているとして「ユーロ圏経済のリスクは依然下向き」との認識を示し、必要ならインフレと成長押し上げに向け、一段の行動を取る用意があると強調した。

成長とインフレはいずれも、6月時点に想定した軌道に沿っているとし、9月に公表するスタッフ見通しも含め、行動する前に一段の証拠を見極めたいとの考えを示した。

ECBは主要政策金利であるリファイナンス金利を0.00%に、上限金利の限界貸出金利と下限金利の中銀預金金利もそれぞれ0.25%、マイナス0.40%に据え置いた。

INGのエコノミスト、カーステン・ブレゼスキ氏は、今回の理事会は「すぐに記憶から消え去られるだろう」とし、「9月緩和の可能性は残るが、確定ではない」と述べた。

ドラギ総裁が時間をかけて英国のEU離脱決定による影響を見極める姿勢を示したことで、ユーロは当初、対ドルで上昇したが、その後はほぼ横ばいまで押し戻された。総じて金融市場は反応薄だった。

ECBは金利は長期間にわたり、また現在の資産買い入れ期間以降も現行かこれを下回る水準にとどまるとし、月額800億ユーロ(880億ドル)の資産買い入れ策は2017年3月まで、必要ならインフレが目標に向け加速する兆候がみられるまで継続する方針をあらためて示した。

資産買い入れをめぐっては、ドイツ国債を中心に、対象となる適格国債の不足が指摘されている。中銀預金金利の水準を下回る利回りの国債は買い入れ対象から除外するとの規定があるためだ。

だがドラギ総裁は買い入れ規定の変更に関しては協議しなかったと明らかにし、技術的な要因が買い入れの妨げになることはなく、必要なら見直すと述べるにとどめた。

<ブレグジットとイタリア>

英国のEU離脱決定はユーロ圏のぜい弱な景気回復の脅威とみられていたが、ドラギECB総裁は「ユーロ圏の金融市場は、英国のEU離脱決定を受けた不確実性やボラティリティーの高まりを底堅く乗り切っていると判断している」と指摘。

「中銀が必要なら流動性を供給する方針を表明していたことに加え、われわれの緩和的な金融政策措置や強固な規制、監督の枠組みも市場の緊張抑制に寄与した。金融状況は引き続きかなり支援されている」と話した。

ECBの頭痛の種となっているイタリアの銀行の不良債権問題については、対処すべき問題であり、欧州の規定は公的救済の余地を残しているとの立場を示した。

*内容を追加して再送します。

ロイター
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