ニュース速報

ビジネス

インタビュー:追加緩和必要、月末日銀会合が好機=自民・山本氏

2015年04月01日(水)17時06分

 4月1日、「アベノミクス」の仕掛け人である自民党の山本幸三衆議院議員は、日銀短観など最近の経済指標を踏まえた景気情勢には足踏み感があり、注意が必要と語った。1月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 1日 ロイター] - アベノミクスの「仕掛け人」である自民党の山本幸三衆院議員は1日、ロイターのインタビューに応じ、日銀短観など最近の経済指標を踏まえた景気情勢には足踏み感があり、注意が必要と語った。物価がマイナスに転じる可能性も展望し、日銀による追加緩和が必要との認識を示した。追加緩和によって円安が加速する可能性を否定し、国際的に批判されることはないとの見通しも示した。

山本氏は今年1月のインタビューで「当面、緩和の必要はない」としていたが、足元の景気・物価情勢を踏まえ、量的緩和政策の強化を促した。「物価の落ち込みを見過ごすのは、中央銀行として採るべき政策ではない」と語り、デフレ脱却に向けた日銀の姿勢が問われれば、海外から株の売り浴びせも懸念されると警戒。

今夏以降の景気回復を確実にし、デフレ・マインドに逆戻りしないためには、追加緩和が「絶対的な必要条件だ」と、緩和の重要性を訴えた。

<景気は足踏み気味、デフレに逆戻りリスクも>

日銀の政策判断の前提となる景気情勢について、日銀短観などをみると「生産が思ったほど強くない。消費は底打ちし出したが、強く改善しているわけではない」と指摘。「方向としては改善しているが、若干足踏み気味で、少し要注意だ」と警戒した。

同時に物価の基調については「緩やかに上昇する」と見通し、円安と交易条件の好転で「今年の夏から来年にかけて、景気は一気によくなる」との展望を語った。

それにもかかわらず、追加緩和の必要性を強調した背景には、夏以降の景気回復を確実にし、デフレ・マインドに逆戻りしないためだとし「緩和することによるリスクより、緩和しないことのリスクのほうが大きい」と語った。

追加緩和のタイミングについて、山本氏は「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」が公表になる4月30日会合が『良いタイミング』だ」と指摘。「景気が足踏み状況にある。物価もマイナスになる可能性がある」とし、「日銀として、2%の物価目標に向かって、断固対応する姿勢を示さないわけにはいかない」と緩和の強化を促した。

追加緩和による円安を警戒する政界に対しても、統一地方選後の4月後半の会合であれば、理解が得られるとみているようだ。

<追加緩和でもそれほど円安に行かず>

一方、追加緩和に伴う円安への懸念に対しては、米国の利上げ時期が後退していることを挙げ「それほど円安にいかないと思う」と述べ、懸念を否定。追加緩和は「世界経済にも貢献する」として、国際的な批判は浴びないとの見解を示した。

米金融引き締め時期については「早くて9月、場合によっては12月(にずれ込む)」と見通した。

緩和強化の手段については、国債以外にも、社債・REIT(不動産投資信託)、財投機関債など多様な資産の買い入れや、付利をなくすなど、いろいろあると語った。

<2016年に2%目標達成、秋にデフレ脱却宣言へ>

今後の政策運営に関連して、山本氏は2016年には日銀が掲げる「2%の物価目標」の達成が見込まれるとしたが、17年4月の消費税率10%への引き上げの影響を見極めるまで、緩和スタンスを続けるべきとの考えに変わりないと指摘。「2016年秋にはデフレ脱却宣言し、2017年4月に消費税率引き上げ。これが理想的なシナリオだ」と語った。

*内容を追加しました。

(吉川裕子 木原麗花 編集:田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

SBG、投資先のAI活用で「シナジー効果」も=ビジ

ワールド

米国務副長官、イスラエルの「完全勝利」達成を疑問視

ビジネス

武田薬、認知症治療薬候補でライセンス契約 最大21

ワールド

トランプ氏が不倫口止め料支払いを個人的に指示、元顧
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 8

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 9

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中