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米株安と逆行する日本株高、「官製相場」や増益期待が下支え

2015年03月11日(水)18時26分

 3月11日、米株が急落したにもかかわらず日本株は逆行高、背景には公的な資金で支えられている日本株の構造に注目する動きもある。10日、都内で撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 11日 ロイター] - 米株が急落したにもかかわらず、11日の市場で日本株は逆行高となった。背景には公的な資金で支えられている日本株の構造に注目する動きもある。ただ、緩和マネーが背景となっている金融相場だけに、海外投資家がリスクオフに動けばその影響を受けざるを得ない。

米利上げをめぐる海外株の乱高下に対する警戒感も根強く残っている。

<「官製相場」や増益期待>

米ダウ<.DJI>が急落すれば、それ以上に下落することが多かった日本株だが、11日の市場では逆行高となった。10日のダウが332ドル安と今年一番の下落幅を記録したにもかかわらず、日経平均<.N25>は58円高。一時は171円高まで上昇した。朝方はさすがに売りが先行したが、一巡後は切り返し、プラス圏で終了した。

「官製相場」といわれる日本株市場では、日銀のETF(上場投資信託)買いや公的年金のポートフォリオ見直しによる買いへの期待が強い。「実際に買いが入ったかどうかは不明だが、期待感をもとに買ってくる短期筋がいるようだ。さらに官製相場と考えれば、ショートも振りにくい」(みずほ証券エクイティ調査部シニアテクニカルアナリストの三浦豊氏)という。

さらに、日本の景気や企業業績への期待感もある。来期2016年3月期の一株利益が現在の水準から7%程度上昇すれば、PERが現在と同じであっても日経平均は2万円に到達する計算だ。円安と原油安を背景に来期は10─15%増益との見方も多くなっており、それをベースにすれば、日本株は依然として割安感がある。

<金利上昇局面での高成績>

米株下落の大きな要因はドル高だ。2月米雇用統計が予想を上振れたことで、早期の米利上げ観測が強まっている。金利上昇局面では、日本株は相対的パフォーマンスがいいことで知られる。

1999年と2004年に米国は利上げを行ったが、ダウの年間上昇率は25.2%と3.1%だったのに対し、日経平均は36.7%と7.6%だった。

2回の過去例しかなく、市場をめぐる状況も当時とは大きく異なるが、利上げは米経済が好調であるからこと行えるのであって、米経済を中心としたグローバル需要の増加を日本の輸出産業が強く享受すると期待されることには変わりない。ドル高はその半面で円安をもたらすことも、日本株の好パフォーマンスを期待させる背景だ。

「米経済の影響力は以前と比べれば小さくなったとはいえ、依然としてグローバル経済に大きな影響を与える。世界の景気敏感株と呼ばれる日本株には好環境だ」と、三菱UFJ投信・戦略運用部副部長の宮崎高志氏はみる。

ある外資系証券の関係者は、米利上げの接近で米株ロングの調整が出ている一方、その売却資金の運用先として、量的緩和政策の開始で値上がりが期待できる欧州株や、日銀などの買いで下値が限定的な日本株に注目する声が上がっていると話している。

<主因はSQ要因か、海外勢動向への警戒感残る>

ただ、日本株が逆行高した最大の要因は、13日に控えるメジャーSQ(特別清算指数)算出のようだ。

期近物から期先物へのロールオーバーは基本的には相場にとっては中立要因だが、下落局面でも順調に乗り換えが進んでいることが市場心理に好影響を与えている。「週末のメジャーSQに向けて、プレミアムが付いた形で期先へのロールオーバーが順当に進んでおり、先高観につながっている」(国内証券トレーダー)という。

米景気が好調であるからこその米利上げだが、11年ぶりとなる利上げが、緩和マネーをベースにした今の金融相場にどのような影響をもたらすのかは、まだ読めない。先が不透明なときはいったんポジションを閉じるのが、ファンドマネージャーの鉄則だ。

海外の長期投資家が日本株を買い始めているとの観測もあるが、デリバティブ商品を組み合わせて売買するヘッジファンドなどがリスクオフに転じれば、逆行高とはいかなくなる。3月にかけては日本株だけでなく、海外の株価も歴史的な高値を付けた。日本株も、グローバルな金融相場の中にある。

10日の米株急落は「秩序だった下げ」(外資系証券)とされ、弱気の広がりは限定的だった。ただ、マーケットが本格的に米利上げを織り込み始めたことで「ハト派サプライズ」への反動を含め、少なくとも来週17─18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)までは、リスクポジション縮小に動きやすい地合いは続きそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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