ニュース速報

トランプ氏が対中関税引き上げ、報復に対抗 米企業に撤退要求

2019年08月25日(日)13時41分

[ワシントン/北京 23日 ロイター] - 中国が米国製品に対する追加報復関税を発表したことを受け、トランプ米大統領は23日、対中関税の新たな引き上げを発表した。さらに米企業に対し中国からの事業撤退も要求した。通商問題を巡る米中の対立は深まる一方となっている。

中国商務省は同日、米国から輸入する750億ドル相当の製品に対し5─10%の追加関税を課すと発表。米国が9月1日から発動を予定する対中制裁関税「第4弾」に対する報復措置とみられる。一部製品に対する追加関税は9月1日、残りは12月15日に発動する。対象となるのは、米国から輸入する大豆や牛肉、豚肉を含む農産物や小型航空機など計5078品目。自動車・部品に対する関税も復活する。[nL4N25J3AE]

中国商務省は声明で「米国の一国主義や保護主義により今回の決定を余儀なくされた」と表明。ある中国外交筋は「通商合意は望ましいが、中国の国益にそぐわず、相互信頼が欠如した合意を求めているわけではない」と強調した。

これに対し、トランプ大統領は、これまでに課している2500億ドル相当の中国製品に対する関税を現在の25%から30%に引き上げると表明。10月1日から適用する。さらに中国製品3000億ドルに課す追加関税第4弾の税率も10%から15%に引き上げるとした。第4弾の発動時期は一部品目が9月1日からだが、全体の半分近くの品目は9月1日から12月15日に延期されている。[nL4N25J4DC]

米通商代表部(USTR)は関税引き上げの日程を確認したが、10月1日に30%への引き上げに踏み切る前にパブリックコメント期間を設けるとした。

トランプ氏はツイッターへの投稿で「残念なことに、これまでの政権は中国が公正かつバランスの取れた貿易を出し抜くことを許し、これが米国の納税者の負担となってきた」と指摘。「大統領としてもはや許すことはできない!」と述べた。

またこれに先立ち「偉大な米企業に対し、中国の代替先を即時に模索するよう命じる。事業を米国に戻し、米国内で生産することも含まれる」とし、「われわれに中国は必要ない。率直に言えば、中国がいない方が状況はましだろう」とも投稿した。

トランプ大統領による中国からの撤退命令に法的拘束力はなく、実際にどのように米企業を中国から撤退させるかは不明。専門家は、税制の変更や制裁などを通じ、中国における米事業を制限、縮小させることができるものの、プロセスは長期間を要する可能性があるほか、両国の経済に深刻な影響が及ぶ恐れもあるとした。

中国の締め出しについては、同国で事業を展開する米企業からの連邦政府調達を制限することが最も効果的な選択肢となり得る。ただしボーイングやアップル、ゼネラル・モーターズ(GM)など、連邦政府の大型調達先で中国で幅広く事業を展開する企業が大きな痛手を被ることになるとみられる。

全米小売業協会(NRF)は声明で、米国の小売業界が世界第2位の経済大国である中国から撤退することは現実的でないという見方を示した。

また、NRFのシニア・バイス・プレジデント、デビッド・フレンチ氏は「このような環境で企業が将来の計画を立てることは不可能だ。米政権の手法は明らかに機能しておらず、米国の企業や消費者への税金を増やすことが答えではない」と批判した。

ホワイトハウスのナバロ大統領補佐官(通商製造政策局長)は、中国との貿易戦争が物価上昇や米国の景気減速を招くことはないとした上で、9月の米中貿易交渉は予定通り実施されるという見方を示した。[nL4N25J38J]

トランプ氏は、米国で乱用が問題となっているオピオイド鎮痛薬「フェンタニル」についても、中国からの流入を阻止するため、宅配大手フェデックスやユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)、ネット通販大手アマゾン・ドットコム、米郵政公社(USPS)に対し配達を拒否するよう指示した。

中国の政府系英字紙チャイナ・デーリーは24日の社説で、中国側の関税対象リストは「慎重な計算」の結果だと指摘した。その上で「米国が近隣窮乏化政策を全面的に進める中、中国は自国の中核的な国益と経済的利益を守るため反撃せざるを得ない」と主張。「米国の意思決定者が目を覚ますよう、中国は対抗措置をとった。米政府が大阪での合意事項に従うまで通商合意はないと理解すべきだ」と警告した。

(※原文記事など関連情報は画面右側にある「関連コンテンツ」メニューからご覧ください)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「米国の和平案推し進める用意」、 欧

ビジネス

米CB消費者信頼感、11月は88.7に低下 雇用や

ワールド

ウクライナ首都に無人機・ミサイル攻撃、7人死亡 エ

ビジネス

米ベスト・バイ、通期予想を上方修正 年末商戦堅調で
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中