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焦点:好況ベトナムで電力ブーム、石炭産業の「希望の星」に

2019年06月02日(日)11時15分

Khanh Vu and Henning Gloystein

[ハノイ/シンガポール 24日 ロイター] - ベトナムは目下、エネルギー関連投資家の熱い視線を浴びている。電力需要拡大に対応するため、今後10年間のエネルギー関連支出が最大1500億ドル(約16兆4000億円)に達すると見られているためだ。

環境への配慮を重視する兆候はあるが、主力は石炭になりそうだ。

1億人に迫る人口を擁し、国内総生産(GDP)が毎年約7%のペースで成長するベトナムは、現在約4万7000メガワット(MW)の発電量を、2020年にまでに6万MW、2030年までに12万9500MWに増やす必要があると予測している。

ベトナムが目標達成するには、隣国タイにおける総発電容量を上回る能力を2025年までに追加する必要があり、2020年代半ばに同国の電力セクターは英国よりも大きくなる可能性が高い。

「ベトナムは石炭産業にとって大きな成長ストーリーとなっている。石炭需要はきわめて強くなるだろう」。シンガポールに本拠を置くコモディティ市場専門コンサルタント、シエラビスタ・リソーシズでマネージングディレクターを務めるパット・マーキー氏はそう語る。

韓国サムスン電子<005030.KS>などグロバール企業の生産拠点でもあるベトナムは、かつて水力発電に依存していた。現在では低コストだが環境汚染をもたらす石炭火力発電が主力となっている。

米ハーバード大学ケネディスクールのアッシュセンター・オン・ベトナムによる研究論文によれば、2017年までの5年間で、ベトナムの石炭消費量は75%増加しており、これは世界のどの国よりも速い増加ペースだという。

現在のベトナムの電力開発計画(PDP7)では、新規需要への対応において石炭火力発電を主役に据えている。

PDP7では、2030年に向けて発電量が倍増するなかで、石炭火力発電が急速に成長し、エネルギー市場に占めるシェアが現在の33%から56%に拡大すると予想している。

だが、2016年に入りPDP7改訂に伴って重点が変化を始め、低コストの再生可能エネルギーが支持されるようになっている。アナリストは、今年後半に策定されるPDP8では、政策調整がさらに進むと予想している。

「ベトナムの優先課題の1つは、環境を守るため、再生可能エネルギー源の開発を進め、従来の電力源に対する依存度を徐々に減らしていくことだ」とCao Quoc Hung通商産業副大臣は今月初め、同省ウェブサイトに掲載された声明で述べている。

<再生可能エネルギーの展望は>

急速な環境汚染の拡大に直面したベトナム通商産業省は、いまだエネルギー部門の脇役にすぎない再生可能エネルギー普及に向けたインセンティブを提供し始めた。

6月に上程予定の法案によれば、国内電力供給を一手に担う国営のベトナム電力公社(EVN)は、太陽光発電プロジェクトによる電力を1キロワット時(kWh)当たり6.67─10.87セントで買い取ることになる。

「固定価格買取(FIT)制度の水準が高いため、太陽光発電に対する関心は非常に高い」。そう語るのは、コンサルタント会社ローランド・ベルガーのディエター・ビレン氏だ。

ベトナムの太陽光発電セクターに早くから参入した事業者の1つが、隣国タイの電力会社ガルフ・エナジーだ。同社は今年、固定価格買取制度の対象となる複数の長期プロジェクトに参加している。

ビレン氏は、「魅力的なFIT制度のおかげで、風力発電への関心も高まっている」という。同買取価格は、地上(オンショア)風力発電ではkWh当たり8.5セント、洋上(オフショア)風力発電では同じく9.8セントとなっている。

6月には世界風力会議(GWEC)がベトナム首都ハノイで会合を開き、新たな市場における成長を推進したい考えだ。

政府が再生可能エネルギーへの支援政策を続け、風力・太陽光発電のコストが低下し、性能の向上が進めば、2030年時点におけるベトナム最大の電力源として、再生可能エネルギーが石炭の座を脅かす可能性もある、とローランド・ベルガーのビレン氏は指摘する。

<それでも石炭が王様か>

だが、PDP8の長期計画がどうであれ、電力需要に対応する手っ取り早い対策をベトナムが必要としていることには変わりない。

「ベトナムは大規模な経済成長のただ中にあり、管理可能なコストで、なるべく早く発電能力を増大する必要がある」とシエラビスタのマーキー氏は語る。石炭火力発電は、現在進行中の計画により2020年までに現在の15ギガワット(GW)に加え、さらに2.7GWが追加されると同氏は言う。

政府データによれば、今月の電力消費量は過去最大の3万6000MWに達しており、現在供給可能な最大電力に迫っている。政府は今月、消費者に対し、大停電を回避するため、エアコンの設定温度を低くしすぎないよう要請した。

世界銀行によれば、ベトナムでは2030年までに最大1500億ドルに上る電力セクター向け投資が必要になるという。これは、2010年以降、同セクターに投じられた800億ドルのほぼ2倍に相当する。

ベトナムは、必要な電力増を実現するための資金調達に苦戦しており、汚職も引き続き問題となっているが、企業の市場参入意欲は高い。

世界最大級のガス火力発電タービンメーカーであるドイツのシーメンスは4月、将来的な協力に向けた覚書(MoU)をベトナム政府と調印した。

シーメンスでアジア太平洋地域大規模ガスパッケージ・ソリューション事業の担当副社長を務めるグレガー・フランク氏によれば、同社は、大規模発電プロジェクトに向けた「初期の開発及び株式・社債による資金調達」の段階にあるという。

また4月には、ベトナムにおける近年で最大級のエネルギー契約として、日本の国際協力銀行(JBIC)を中心とするコンソーシアムが、石炭火力発電所の建設向けに20億ドルの融資を承認した。

ベトナム国内の石炭埋蔵量が減少していることもあって、同国の年間石炭輸入量は2000万─3000万トンに、「今後1年程度で」増える、とコモディティ専門商社タタ・インターナショナルで鉱産資源販売部門を率いるサビアサチ・ミシュラ氏は予想する。

ベトナム税関のデータによれば、今年1─4月、ベトナムの石炭輸入量は前年同期比で2倍以上の1334万トンに達した。

マーキー氏は、現在の需要6300万トンに対して、輸入量が2030─40年のあいだに8000万トンから1億1000万トンでピークに達すると予測する。

こうした急成長が実現すれば、他の多くの国で斜陽化している石炭産業にとって、ベトナムは最後の急成長市場の1つになるだろう。

(翻訳:エァクレーレン)

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