ニュース速報

焦点:ロシア疑惑報告書、トランプ氏はなぜ「訴追」を免れたか

2019年04月20日(土)13時05分

Jan Wolfe and Noeleen Walder

[ワシントン 18日 ロイター] - 米司法長官は18日、2016年大統領選のロシア介入疑惑を巡る捜査報告書の公開を前に記者会見し、トランプ陣営とロシア側との共謀は認められなかったと強調した。

その一方で、一部の法律専門家からは、モラー特別検察官の捜査報告書にはそれとは正反対の証拠が多数盛り込まれており、判断は議会に任されるべきだとする声が出ている。

18日に公表されたモラー特別検察官の報告書は、トランプ氏による捜査妨害の試みについて新たな詳細を明らかにした。トランプ氏がモラー氏を解任したり捜査を制限しようと試みたり、2016年6月に選対幹部がロシア人と面会した際の詳細を秘匿し、さらに元顧問に恩赦をちらつかせたことなどが、新たに明かにされた。 

民主党側は18日、捜査報告書にはトランプ氏の不適切な行動を示す不穏な証拠が含まれており、議会による調査が加速する可能性があるとの見方を示した。

一部の法律専門家も、こうした見方に同調する。検察側にはトランプ氏を司法妨害容疑で追及するだけの十分な証拠があったものの、現職大統領は訴追しないという司法省の長年の方針を踏まえ、モラー氏が訴追に難色を示した、と分析する。

コーネル大学のジェンス・オーリン教授(法学)は、モラー報告書は、「(司法妨害の)事案の数とその深刻度について、非常に徹底的に調べたものだ」と指摘する。

モラー氏の報告書は、司法当局者や証人に対するトランプ氏の振る舞いも含めた一連の行動について詳述。その中で、モラー氏は議会には大統領を監督する権限があると指摘している。

少なくとも6人の法律専門家が、モラー氏は議会がこの件を取り上げることを意図していると分析している。

「(報告書は)議会に対して、ウインクし、うなずき、再びウインクして、証拠は十分にあり、次は議会が動く番だと訴えている」と、ロサンゼルスのロヨラ法科大学院のジェシカ・レビンソン教授は分析する。

議会上院の民主党議員も、同じ見方を示した。下院各委員会の委員長は共同声明を出し、議会が証拠を吟味することを「特別検察官は疑いなく期待している」と表明した。

だが、共和党のダグ・コリンズ下院議員は、これに異議を唱えた。

「報告書は、議会が今司法妨害を調べるべきだとは言っていない。司法妨害に関する立法はできると言っているのだ」と、同議員はツイートした。

モラー氏の広報担当者は、コメントの求めに応じなかった。

トランプ氏の法律チームは、報告書は大統領にとって「完全な勝利だ」としている。

「もし司法妨害があったと思ったなら、彼らは(訴追)していただろう。だがそうしなかった」と、トランプ氏の弁護士を務めるジェイ・セクロー氏はインタビューに答えて言った。

民主党側が議会での追及に向けて動くかは現段階でははっきりしない。もし仮に下院が弾劾手続きの開始を決めても、共和党が過半数を占める上院がトランプ氏を弾劾する可能性は極めて低い。

トランプ氏が指名したバー司法長官は18日の記者会見で、トランプ氏を司法妨害容疑で追及するには十分は証拠がなかったと述べ、大統領を擁護した。

バー氏は、議員に宛てた過去の書簡で、大統領選への介入について、トランプ陣営はロシア側と共謀していないとしたモラー氏の捜査の結果によっても、この問題は根拠がなくなっていると述べていた。

<ウォーターゲート時代の司法省見解>

米国の法律では、「司法行政のあるべき執行に影響を与えたり、邪魔したり、妨げたりすること」は犯罪にあたる。

司法妨害を立証するには、検察側は、容疑者が「不正な」または不適切な動機から行動したこと、つまり捜査を妨害する明確な意思があったことを証明しなければならない。

また、司法妨害事件は、他の不適切な行為の秘匿と重なる場合が多いと、法律専門家は指摘する。

現職大統領が焦点となる場合、問題はより複雑になる。

ニクソン大統領の辞任につながった1970年代のウォーターゲート事件の当時に出された司法省の見解は、現職大統領は訴追できない、というものだった。

米国憲法は、この問題について沈黙している。

モラー特別検察官は捜査報告書で、同省のこの見解を「受け入れた」とし、トランプ氏を司法妨害容疑で訴追するのに十分な証拠があるかどうかについて、結論を出せなかったとしている。

<動機は何か>

大統領の行動と意図は「犯罪行為は全くなかったと断定的に結論することを妨げる難しい問題を提示している」と、モラー報告書は記している。

だがモラー氏は、報告書は大統領の「潔白を証明するものではない」とも述べている。

バー司法長官は、大統領が、捜査によって自分の政権が脅かされると考え「不満と怒りを募らせていた」と述べた。

それにもかかわらず、トランプ氏は捜査の完了に必要な書類や証人をモラー氏から奪ったりしなかったと、バー氏は指摘した。

「行動が妨害的だったかどうかは別にして、動機が不正ではなかったことを示すこの証拠は、大統領に捜査を妨害する不正な意図があったとする主張に強く対抗するものだ」と、バー氏は述べた。

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

*カテゴリを修正して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、空軍の核戦争抑止力を強調 式典で

ビジネス

中国製造業PMI、11月は8カ月連続50割れ 非製

ワールド

米・ウクライナ、30日にフロリダで会談 和平案協議

ワールド

香港火災、犠牲者追悼の動き広がる 150人依然不明
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 9
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 10
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中