ニュース速報

ボーイングの737MAX、引き渡しが凍結状態に=関係筋

2019年03月14日(木)15時19分

[ダブリン/シアトル 13日 ロイター] - 米政府は13日、エチオピアで墜落事故を起こしたボーイングの旅客機737MAXの運航を一時停止すると発表したが、業界関係者によると、737MAXの引き渡しは同日、事実上凍結状態に陥った。

ただ、生産は続けられているという。

ある関係筋は「利用できない航空機の引き渡しを誰が受けるだろうか」とコメントした。

737MAXはボーイングで最も売れている機種。同社は月52機の航空機を生産しているが、このうち生産が最も多いのは最新機種である737MAX。ボーイングは具体的な内訳を公表していない。

同社は今後もシアトル郊外の工場で737型機の生産を続け、6月から生産を再び加速する計画を立てている。[nL3N2000BF]

メーカーは、サプライチェーン上の問題で、生産停止・加速を避ける傾向にある。ただ、引き渡しができない航空機は、追加のコストとして保管料が発生する。

運航停止が1カ月続くごとに、ボーイングは18億─25億ドル程度の売り上げが先送りされる可能性がある。運航停止が解除され、機体の引渡しが行われれば、遅れを取り戻すことが可能になる。

ボーイングが1月に示した2019年の売上高見通しは1095億─1115億ドルだった。

737MAXは各国で運航が停止されているが、ボーイングの広報担当は、引き渡しへの影響について「引き続き調査する」とコメントした。

バーティカル・リサーチ・パートナーズのアナリスト、ロバート・ストラード氏はリポートで「737MAXの墜落はボーイングにとって明らかに『悪材料』だが、同社は最終的に(問題を)克服するだろう」との見方を示した。

米国の主要取引先であるサウスウエスト航空、アメリカン航空グループ、ユナイテッド航空はコメントを控えている。3社はこれまでのところ、737MAXの安全性への信頼を表明している。

ボーイングでは、2013年にもバッテリー発火問題を受けて787型旅客機(ドリームライナー)の運航が123日間停止された。

航空機の売買契約には、規制当局の命令による運航停止で発生する損失の補償を航空会社が自動的に請求できる条項は通常盛り込まれていない。

ただ業界幹部によると、引き渡しが行われない場合のファイナンスコストを航空機メーカーが支払うことはあるという。

英コンサルティング会社のIBAの推定によると、737MAXのファイナンスコストは1機当たり月36万ドル、1日1万2000ドル。

航空会社ノルウェー・エアシャトルは13日、「737MAX8」の運航停止を巡り、運航停止で生じる売上高の損失や追加費用に対する補償をボーイングに求める方針を示した。[nL3N21026G]

バーティカル・リサーチ・パートナーズのストラード氏は、ボーイングが顧客に支払う可能性のある補償額を予想するのは非常に困難と指摘した。また、競合エアバスのA320型機は向こう数年にわたり納入の余地がなく、航空会社がA320に乗り換えることは非現実的との見方を示した。

*内容を追加しました。

ロイター
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