ニュース速報

韓国大統領、米朝合意の実現に協力表明 首脳会談決裂受け

2019年03月02日(土)01時49分

[ソウル 1日 ロイター] - 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は1日、米朝首脳会談が物別れに終わったことについて、北朝鮮の非核化を巡り両国が今後合意できるよう韓国としても協力していきたいと表明した。

トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は2月28日までの2日間、ベトナムの首都ハノイで会談したが、北朝鮮への制裁問題などで折り合わず、合意に至らなかった。2日目の会談は予定より早く切り上げられた。

文大統領は朝鮮半島の緊張緩和に向け、金委員長と昨年だけで3回首脳会談を実施し、米朝間の交渉を促進するなどして取り組みを進めてきた。

文大統領は「米朝合意を何としてでも実現させるべく、米朝両国と緊密に意思疎通を図り、協力していく」と強調した。

トランプ大統領は米朝首脳会談後の記者会見で、関係構築や非核化で進展はあったが、拙速に悪い合意を結ばないことが重要と考えたと語った。「北朝鮮は全面的な制裁解除を要求したが、われわれはそれはできなかった」と説明した。

またトランプ大統領は1日、ツイッターで、金委員長との交渉は「非常に実質的」だったとし「われわれは、かれらが何を求めているか分かっているし、かれらはわれわれが確保しなければならないことが何か分かっている」と述べた。次の措置について詳細は明らかにせず「関係は非常に良好。何が起こるか、みることにしよう!」と投稿した。

<説明の食い違いも>

一方、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は、ハノイで記者会見を開き、北朝鮮が求めたのは制裁の一部解除で、全面解除は要求しなかったと説明しており、トランプ大統領の説明との食い違いも見られた。外相はまた、制裁解除を求めたのは国民生活に関連するもので、軍関連のものではなかったとした。

外相によると、北朝鮮は寧辺の核施設について、双方の専門家の監視下で廃棄するという現実的な提案を行ったという。「これは二国間の現在の信頼レベルの下でわれわれに可能な非核化への最大のステップだ」と語った。

会見に同席した崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は、米国が寧辺の核施設廃棄の見返りとして制裁一部解除を拒否したことから、金委員長が「合意模索への意欲を失う可能性がある」と指摘した。

ただ、双方は協議継続への意欲もにじませた。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は、両首脳が建設的で誠意ある協議を実施し、生産的な話し合いを続けることで一致したと伝えた。会談決裂には言及していない。

KCNAによると、金委員長はトランプ氏が会談で成果を出すために長距離を移動し、積極的に努力したことに謝意を表したという。金委員長は2日にベトナムを出発する予定。

<対話継続への意欲>

米国務省の高官は、北朝鮮メディアによる報道は「非常に建設的」だと評した。「お互いに対話の機会はまだ十分にあることを示している」と続けた。

同高官によると、北朝鮮は、大量破壊兵器を直接対象としたものを除くすべての国連制裁の解除条件として、寧辺の核施設の一部閉鎖を提案したという。

国連と米国は、北朝鮮が2017年に核・ミサイル実験を繰り返し実施したことを受けて、北朝鮮の資金源を断つため、対北制裁を強化した。

高官は「われわれが直面した問題は、現時点で北朝鮮が大量破壊兵器プログラムの完全な凍結に前向きではなかったことだ。制裁解除で多額の資金を与えることは、実質的に大量破壊兵器の開発を手助けすることになる」と述べた。

トランプ大統領は、金委員長が核・ミサイル実験停止を続けると約束したと述べたが、会談決裂によって北朝鮮は核能力を引き続き保有することになる。

トランプ大統領は米朝首脳会談後、米国に向かう機中で安倍晋三首相、文大統領と電話会談し、日韓と連携を続けると同時に北朝鮮との対話を継続していくことを伝えた。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタン国際航空、地元企業連合が落札 来年4月か

ビジネス

中国、外資優遇の対象拡大 先進製造業やハイテクなど

ワールド

リビア軍参謀総長ら搭乗機、墜落前に緊急着陸要請 8

ビジネス

台湾中銀、取引序盤の米ドル売り制限をさらに緩和=ト
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中