ニュース速報

米11月住宅着工3.2%増、一戸建て住宅市場は依然弱く

2018年12月19日(水)03時21分

[ワシントン 18日 ロイター] - 米商務省が18日発表した11月の住宅着工件数(季節調整済み)は年率換算で前月比3.2%増の125万6000戸と、3カ月ぶりにプラスに転じた。集合住宅が急増し、全体水準を押し上げた。ただ一戸建て住宅は1年半ぶりの低水準に低迷し、住宅市場の弱まりが深刻化していることを示唆した。より広範な経済に波及する可能性もある。市場予想は122万5000戸だった。

10月の数字は当初発表の122万8000戸から121万7000戸へ下方改定された。

11月は、一戸建ての完成件数が3カ月連続で減少し、戸数ベースで1年超ぶりの低水準をつけた。住宅市場の弱含みを強調する内容だ。

不動産情報サイト、ジローのシニアエコノミスト、アーロン・テラザス氏は「住宅建設は2018年に休止状態となった」と述べる。「建設業界の動向が、より広範な経済への影響の前兆ではないかとの見方が既に出ている」とした。

着工件数の先行指標となる建設許可の件数は11月に前月比5.0%増の132万8000戸となった。月々の変動が大きい集合住宅が急増した。

住宅市場は、用地・労働力不足による供給の逼迫や、住宅ローン金利の上昇が抑制要因となっている。住宅価格の上昇はペースを落としてきたものの、依然として賃金の伸びのペースは上回っている。初めての住宅購入者の一部が手を出せない状況だ。

住宅市場の弱さが続いていることは、今後経済全体が鈍化することを示唆しているかもしれない。住宅投資は第1・四半期から第3・四半期まで縮小した。縮小期間は2009年半ば以来の長さだ。

住宅投資は第4・四半期も縮小したとみられる。市場がこれまでよりも高い住宅ローン金利に慣れるまでの期間、19年上半期までは住宅投資の弱含みは続くとエコノミストらはみている。

連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、30年固定住宅ローン金利は今年に入り60ベーシスポイント(bp)超上昇し、現在は平均4.63%となっている。米連邦準備理事会(FRB)は19日に今年4回目となる利上げを決めるとみられ、金利は高止まりするだろう。

ただ、MUFG(ニューヨーク)の首席エコノミスト、クリス・ラプキー氏は「住宅ローン金利はフェデラルファンド(FF)金利誘導目標が3.0%になるとの見通しを織り込んだ水準となっているため、FRBがあと数回の利上げを行ったとしても住宅市場はそれほど大きな影響は受けない」と指摘。「FRBが緩やかな利上げの軌道から外れれば、市場に対し経済見通しを懸念しているとのメッセージを送るリスクがあるため、FRBがこうした軌道から外れないことが重要となる」と述べた。

住宅着工件数の内訳は、市場で最も大きなシェアを占める一戸建て住宅が前月比4.6%減の82万4000戸と、17年5月以来の低水準となった。3カ月連続のマイナスだった。

一戸建て住宅の地域別は最大市場の南部が6.8%増。一方で北東部は9.5%、西部は24.4%、中西部は3.2%それぞれ減少した。西部が大きく減少したのはカリフォルニア州の山火事の影響と見られている。

建設許可件数の内訳は、一戸建て住宅が0.1%増の84万8000戸だった。一戸建て住宅の着工件数を上回ったことから、向こう数カ月の間に住宅建設がいくぶん加速する可能性がある。

集合住宅の着工件数は22.4%増の43万2000戸だった。集合住宅の建設許可件数は14.8%増の48万戸だった。

ネーションワイド(オハイオ州)の首席エコノミスト、デビッド・バーソン氏は「家主自身が居住する住宅の需要が回復するまで、一戸建て住宅の着工件数の反転は難しい」としている。

この日の統計は、住宅供給が逼迫した状態が続くことを示唆する。一戸建て住宅の完成件数は5.4%減の77万2000戸と、17年8月以来の低水準となった。

建設中の住宅は0.7%増の114万8000戸だった。ただ集合住宅が半分以上を占めた。

*情報を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中