コラム

国際協調派ブルームバーグか、新星ブティジェッジか......日本にとってベストな民主党候補は誰?

2020年02月20日(木)15時40分

「穏健派」の(左から)ブティジェッジ、クロブチャー、ブルームバーグ REUTERS

<今回の民主党予備選は、保護主義に傾斜しがちな左派と自由貿易を支持する穏健派の戦い>

日本の人たちに朗報だ。民主党の大統領候補選びは始まったばかりだが、緒戦のアイオワとニューハンプシャーの両州の結果を見る限り、それなりに希望を持っていい。最後には自由貿易を守り、従来の同盟関係を維持する穏健派が勝つ可能性が高まったからだ。

今回の予備選は、保護主義に傾斜しがちで外交無策の左派と、自由貿易を支持し国際協調路線を取る穏健派の戦いだ。もしも日本の人に投票権があれば、きっと後者の候補に一票を投じるはず。その場合、優先順位の筆頭はマイケル・ブルームバーグ、次いでエイミー・クロブチャー、そしてピート・ブティジェッジという順になる。

今はまだ左派陣営も意気盛んだ。左派の多いニューハンプシャー州の有権者は、高齢ながらカリスマ的な上院議員バーニー・サンダースを選んだ。得票率は25.7%だが、ともかく1位だ。しかしサンダースは自称「民主社会主義者」。アメリカの政界で「社会主義」を名乗るのは自殺行為に等しい。やはり左派の有力候補であるエリザベス・ウォーレン上院議員も、前評判は高かったのに得票率9.3%で4位という無惨な結果に終わった。アイオワ州の党員集会でも勝てなかったから、打撃は大きい。

実は穏健派が左派を圧倒

穏健派はどうか。意外だったのはインディアナ州サウスベンドの前市長という経歴しかないブティジェッジの躍進と、ミネソタ州選出の女性上院議員クロブチャーの健闘。そして、かつて本命視されていたジョー・バイデン前副大統領は惨敗した。「バイデン大統領」は、日本の立場からすれば最良の選択肢だっただろうが(アメリカにとっても、だ)。

サンダースの「勝利」によって見逃されがちだが、穏健派(ブティジェッジ、クロブチャー、バイデン)の得票率は52.6%で、左派(サンダース、ウォーレン)の34.9%を圧倒している。民主党の有権者にとって最も重要なのは、とにかく現職のトランプに勝てる候補を選ぶこと。そして有権者は、社会主義者や左派ではトランプに勝てないとみている。だからブティジェッジとクロブチャーが支持を伸ばす一方、ウォーレンの支持は激減した。

しかも、まだ第3の穏健派がいる。前ニューヨーク市長で億万長者のマイケル・ブルームバーグだ。彼は2月の予備選を回避して、有力州の予備選が集中する3月3日のスーパー・チューズデーに懸ける作戦だ。彼には重大な問題を解決してきた実績もある。財政規律を重んじる一方、社会政策では進歩的だ。彼が市長になったとき、ニューヨーク市は50億ドルの財政赤字を抱えていたが、彼が退任するときは40億ドルの黒字を計上していた。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがキーウに夜間攻撃、子ども4人含む15人死亡

ワールド

欧州新車販売、7月は昨年4月以来の大幅増 BYDが

ワールド

アングル:英国で広がる「国旗掲揚運動」、反移民気運

ワールド

アングル:超長期金利が上昇一服、財務省の発行減額巡
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に侵入してきたクマが見せた「目を疑う行動」にネット戦慄
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 6
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 7
    「1日1万歩」より効く!? 海外SNSで話題、日本発・新…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story