コラム

高市早苗氏の政策・世界観を分析する──「保守」か「右翼」か

2021年09月10日(金)11時59分

生活保護受給者への冷淡さは、保守界隈に特徴的なものである。どちらかというと彼らよりもさらに思想的に先鋭的な「右翼」は、地方都市や農村地帯での土着的ネットワークに基づいており、村落共同体意識が強い。「右翼」が行う街宣活動等の集会も、地元の職能と密接に結びついている場合がある。

一方、ネット右翼をも含有する「保守界隈」は、これとは逆で大都市部における中小零細企業の経営者や大企業における中間管理職等がその大半を構成する。自力で社会的成功を一定程度収めてきた彼らには能力主義、―つまり「貧困は甘えで、努力次第で成功できる」という観念が強く、生活保護受給者に対して殊更冷酷である。高市氏のこの部分については、土着的な右翼ネットワークよりも、もっと都市的な保守界隈との共通言語を感ずるのである。

5.総論

というわけで高市早苗氏の政策・世界観を大まかにみてきた。これ以外にも憲法改正問題、外国人参政権、対アジア政策、対米政策、自衛隊増強案など見るべきところは多いものの、一応最も特徴的で、直近の『文藝春秋』『Hanada』『正論』に登場した政策や世界観を列挙し、分析を試みたものである。

2021年自民党総裁選の行方にあっては全くその行方が分からないところであるが、高市早苗氏を単に「保守」「ネット右翼」ないし「右翼」と括るにははみ出してしまいそうな微細なニュアンスの背景があることをお判りいただけたと思う。


※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

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プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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