コラム

バブル退治に動いた中国人民銀行

2009年07月30日(木)16時27分

 フォーリン・ポリシーの電子版は今週、中国で膨らむ巨大かつ古典的な資産バブルについて注目すべき記事を掲載した。

 最近の報道を見ても、記事の主張は正しいように思える。フィナンシャル・タイムズ紙は次のように報じた


 中国金融当局は7月27日、過去最大規模の新規融資が確実に実物経済に回るするよう銀行に通達した。新たな資産バブルになりつつあると政府関係者が指摘する株式や不動産市場に回らないようにするためだ。

 この新規則は銀行に、融資が何に使われたかを監視するよう求めている。金融緩和策を受けた銀行の新規融資は今年これまでに約1兆ドルと、昨年の同時期と比べて倍以上に膨らんだ。銀行の行き過ぎた融資も問題になっていた。


■中国の中央銀行を思わず尊敬

 こんなことを言うのは自分でも変だと思うが、大恐慌以来最悪の経済危機と言われたこの1年、私の中では次第に中国の中央銀行(中国人民銀行)に対する尊敬の念が芽生えてきた。

 昨年秋、大規模な景気刺激策が必要と判断するとその通りにした。そして、経済にあまりに多くの資金を供給しすぎてバブルを生み、貸し出し市場を歪めていることに気づくと、今度はブレーキを踏んだ。融資のための自己資本基準も厳格化するだろう。すると見事、銀行は貸し出しを抑え、バブルは破裂する前にしぼみ出す。

 もちろん、私は物事を単純化し過ぎている。中国経済にはこの先、人民元やドル建て資産、経済成長の質などと絡んでいくつかの大きな試練が待ち受けている。それに融資拡大(とその急停止)の本当の影響も、表面化するのにしばらく時間がかかるだろう。

 だがとりあえず、今回の新規則は非常に賢明な方策と思える。別の見方もできる。統制経済は、緊急に対処すべき経済課題が山ほどあるとき強みを発揮する。

──アニー・ラウリー
[米国東部時間2009年07月29日(水)14時35分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 24/7/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米長官、和平協議進展に「楽観」も依然課題 ウクライ

ビジネス

中国人民銀、仮想通貨取り締まり強化 投機やマネロン

ビジネス

米スタバ労組、ブラックフライデーにスト拡大 賃上げ

ビジネス

カナダGDP、第3四半期は年率2.6%増 予想大き
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批判殺到...「悪意あるパクリ」か「言いがかり」か
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 6
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story