コラム

「ブラジルは治安が悪い」って誰が言った?

2014年06月22日(日)14時46分

「危なくないですか」「最後まで気を緩めずに」といったメールを、今もときおり日本からいただいている。もちろん統計的に見れば犯罪率は高いのだから、用心するに越したことはないのだろう。

 けれども、そこにこだわっていると、僕みたいに必要以上に緊張することになる。ここはイラクでもなく、アフガニスタンでもない。サッカーという世界で最も人気のあるスポーツの世界選手権が行われているブラジルだ。

 日本に比べて貧富の格差が大きかったり、さまざまな問題はあるにせよ、大会は粛々と進んでいる。スタジアムの建設工事の遅れが大会運営に支障をきたしているという報道も聞こえてこない。むしろ僕にしてみれば、東京の表参道より、こちらの「表参道」のほうがずっと落ち着く。

「ブラジルは治安が悪い」。それはいったい誰が世間に伝えはじめたことなのだろう。この情報がなければ、僕はもう何日か早くワールドカップを「楽しむ」モードに入ることができたはずなのに。

  このトピックはもう1度きっちり、この場で書きたいと思う。日本人にとって見過ごせない要素を含んだ言説が作用していると考えるからだ。

プロフィール

森田浩之

ジャーナリスト、編集者。Newsweek日本版副編集長などを経て、フリーランスに。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)メディア学修士。立教大学兼任講師(メディア・スタディーズ)。著書に『メディアスポーツ解体』『スポーツニュースは恐い』、訳書にサイモン・クーパーほか『「ジャパン」はなぜ負けるのか─経済学が解明するサッカーの不条理』、コリン・ジョイス『LONDON CALLING』など。

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