コラム

写真の修整は規制するべきか

2009年10月21日(水)17時44分

 9月28日のニューヨーク・タイムズ紙によると、広告や雑誌に掲載する女性の写真をデジタル処理で修整した場合には、注意書きを義務づけるという法案が9月15日にフランス国民議会下院に提出された。

 これはいいニュースに違いない。モデル写真の修整が規制されれば、ファッション誌が「こうあるべき」という理想像を女性たちに押し付け、それに合わせて服を買わせたり、体型を変えさせるようなことがなくなる。

 と思ったが、本当にそうだろうか。ひょっとして、人々は広告写真が操作されることを望んでいるのかもしれない。写真が修整されていることなんて何十年も前から知っていて、今さら何の影響も受けないのかもしれない。実際のところ、人々は広告写真の影響をどれくらい受けているのだろう?

 もしかしたら、修整していない写真に「修整していません」と注意書きを付ける方が賢い戦略かもしれない。人々は注意書きに気を付けるようになり、それが明記されていない写真については詳細に確かめようとするだろう。

 ニュース写真はいまやスポーツのようになってしまった。並みはずれて優れた写真は「出来すぎ」と思われ、不正があるのではと疑われてしまう。しかしスポーツと違って、厳しく規制し、監督するのは難しい。報道である以上、政府や国際機関による干渉は不健全であり、民主主義に不可欠な報道の自由と相容れないと考えられるからだ。

 雑誌や新聞が、広告写真と報道写真の使い方の線引きを曖昧にしてしまっているのが現状だ。しかし広告写真に対する規制をきっかけに、報道機関は積極的に――それか、これまでの態度を恥じ入って――規制を行うようになるかもしれない。

プロフィール

ゲイリー・ナイト

1964年、イギリス生まれ。Newsweek誌契約フォトグラファー。写真エージェンシー「セブン(VII)」の共同創設者。季刊誌「ディスパッチズ(Dispatches)」のエディター兼アートディレクターでもある。カンボジアの「アンコール写真祭」を創設したり、08年には世界報道写真コンテストの審査員長を務めたりするなど、報道写真界で最も影響力のある1人。

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