コラム

国連選定「電子政府世界1位」の韓国で国民番号制度見直しの動き、日本のマイナンバーは?

2015年09月02日(水)21時45分

 税金の場合、国税庁のサイトから住民登録番号と名前を入力し、電子署名で本人確認をしてログインすると、本人の住所と家族関係、その年の所得、金融所得(証券取引や貯金利子収入)源泉徴収額、使った医療費と教育費などのデータがぽんぽん出てきて、よほどのことがない限り、自分で金額を入力する必要も、書類を提出する必要もなく確定申告が終わる。

 電子政府を利用するには「公認認証書」という本人確認のための電子署名が必要である。公認認証書は、基本的に銀行のインターネットバンキングを利用する際に必要なもので、銀行口座を持っている成人であれば誰でもネット上で作れる。これをUSBやスマートフォンに保存してログインする際に使う。

 病院に行く際も、保険証や診察券はいらない。身分証さえあれば病院側が行政のデータベースからその人が健康保険に加入しているかどうか、過去の診療内訳も確認する。患者が病院のアプリから診療予約を行うと、当日アプリ経由で病院内のどこに行けばいいのか順番通り案内してくれるので病院内で迷うこともない。処方箋もアプリに届くよう設定できる。現在は地域内病院・大学病院間で診療・検査記録も共有するので、患者が転院しても、同じ検査を繰り返す必要がなくなった。

 オープンガバメント政策により、電子政府サイトで政府が保有する公共データベースも公開、アプリ開発やビジネスに活用できるようにもしている。

 電子政府は住民登録番号があったからこそできた行政サービスである。当初の番号制導入の目的は北朝鮮のスパイを識別するためだった。韓国では1968年から法律によって国民に番号を発行し、1970年から現在の13ケタの番号制度の住民登録制度が始まった。住民登録番号には生年月日と性別、出身地などの情報が盛り込んである。韓国人は出生申告をすると住民登録番号を付与され、行政・医療・教育など全てを番号で管理される。韓国では本人確認の名目で、携帯電話に加入するにも、インターネット回線を使うにも、銀行で口座を作るにも、何をするにも住民登録番号が必要だった。政府機関だけでなく民間企業も住民登録番号と個人情報を紐づけて管理してきた。いざ番号があると、管理される側も楽なので国民総背番号制に対する違和感も不安もなくなる。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、応援演説で円安メリットに言及 米関税のバ

ワールド

米政府機関の一部が閉鎖、短期間の公算 予算案の下院

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story