コラム

Metaが生成AIでMicrosoftと提携した理由

2023年07月21日(金)17時30分

一般的に企業がオープンソースを推進する理由は3つある。1つは優秀な研究者を雇用するため。優秀な研究者にはオープンソース信望者が多いので、オープンソースを推進することで優秀な研究者を集めようという考えだ。事実、MetaのAI研究所のLeCun所長も、オープンソースの熱烈な支持者だ。

2つ目は、オープンソースにすると世界中の技術者が寄ってたかって改良してくれるので、セキュリティなどの機能が向上するから。MetaのCEOのマーク・ザッカーバーグ氏はYouTube上のインタビューで、オープンソースで公開した同社のサーバーソフトは、世界中の技術者が改良してくれたおかげで、セキュリティが大きく向上したと語っている。(情報ソース YouTube「Mark Zuckerberg: Future of AI at Meta, Facebook, Instagram, and WhatsApp | Lex Fridman Podcast 英語)

3つ目は、オープンソースのソフトを中心としたエコシステムが誕生し、影響力を行使できるようになるからだ。有名なオープンソースのエコシステムとしては、Googleが開発したスマートフォン基本ソフト「Android」がある。Google自体はAndroidで一銭も儲けていないが、AndroidのおかでGoogleはスマホ業界に圧倒的な影響力を持っている。

ザッカーバーグ氏も、インタビューの中で、オープンソースを推進する理由としてこの3つのポイントを挙げている。

特に3つ目のエコシステムの構築という理由に関して同氏は、Llama2がAIエージェントのエコシステムの中核になる可能性がある、と語っている。

AIエージェントは、ユーザーに代わって何らかのタスクを実行してくれるチャットボットで、対話型AIの次の進化とみなされている技術だ。

対話型AIの次の進化がエージェントだと考える人の間でも、1つのエージェントがありとあらゆるタスクをこなすようになるという考えと、1つのタスクに特化した無数のエージェントが誕生するという考えの2つの意見がある。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

スイス中銀、第3四半期利益は279億スイスフランに

ワールド

韓国、国有資産売却を緊急停止 安価懸念で李大統領が

ワールド

スイス消費者物価、前月比で3カ月連続下落 中銀にマ

ワールド

韓国CPI、10月は前年比+2.4%に加速 金利据
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story