World Voice

オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

オーストラリアアスベスト問題

画像:shutterstock_673307503

オーストラリアにおけるアスベスト問題は長い歴史を持ち、特に建築材料としての広範な使用から多くの健康問題を生じさせてきました。近年では新しいアスベスト問題が報じられることはほとんどありませんでしたが、最近になってシドニーの多くの場所でアスベストの問題が再発しています。

今回はシドニーの学校などでの最近の発見と、オーストラリアにおけるアスベスト問題の歴史的背景について見ていきます。

shutterstock_1133794574(1).jpg
画像:shutterstock_1133794574

オーストラリアにおけるアスベスト問題の歴史

オーストラリアでは世界の他の国と同様に20世紀の大半でアスベストが耐火性や断熱性に優れた建築材料として広く使用されていました。アスベストの使用量が人口当たりで世界で最も高かった国の一つでした。しかし、1980年代に入ると、アスベストの健康への害が広く認識されるようになり、使用が徐々に制限され始めました。2003年には、アスベストを含む製品の新規使用が全面的に禁止されました。しかし過去に広範に使用されていたため、多くの古い建物には今でもアスベストが残されています。このため、建物の改修や解体を行う際には特別な注意が必要です。オーストラリア政府はアスベスト管理に関して厳格なガイドラインを設けており、アスベストの適切な取り扱い、除去、廃棄を推進しています。

shutterstock_2065720931.jpg
画像:shutterstock_2065720931

シドニーのアスベスト問題

最近、シドニーの40以上の学校、病院や公園といった公共の場所でアスベストが発見されその地域に住む人々に大きな衝撃を与えています。アスベストを吸入するとアスベスト症や中皮腫、肺がんなどの深刻な健康問題を引き起こすことが科学的に証明されています。アスベストによる健康被害は、通常、初めてアスベストを吸い込んでから20〜30年後に症状が現れます。

今回のアスベストの多くはリサイクルされた覆いが原因と見られています。覆いとは、木材や樹皮をチップ状に破砕したものです。土の乾燥を防ぐのに有用なマルチング材料として木の根本に撒かれているのをよく見かけます。

現在どのような経路でアスベストが根覆いに混入したかはまだ分かっておらず、ニューサウスウエールズ州政府が原因の究明にあたっています。アスベストが発見された多くの学校では、撤去作業が終了するまで、全学年で授業がオンラインに変更されています。

このシドニーでのアスベスト発見は、リサイクル資材へのアスベスト混入という、オーストラリアが直面する広範なアスベスト問題に新たな項目を付け加えることになりました。




参考
https://www.sbs.com.au/news/article/more-sites-to-be-tested-for-asbestos-contamination-in-sydney-heres-what-we-know/ory2b9l09
https://www.bhg.com.au/why-is-there-asbestos-in-mulch
When was asbestos banned in Australia? | Asbestos (nsw.gov.au)

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ