World Voice

スペインあれこれつまみ食い

松尾彩香|スペイン

同性婚で社会が変わる?法制化から17年のスペインから見る同性婚の価値観

©️iStock - ronstik

同性婚の法制化をめぐって岸田総理が「家族観や社会が変わってしまう」と発言し、さらに首相秘書官がその発言について「僕だって見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」とコメントをしたというニュースをSNSで目にしました。国のトップやその秘書官がこう言った差別的な発言をしれっとしてしまうことに驚きを隠せませんが、今日はこれを機会にスペインでは同性婚を始め家族の多様性についてどのような動きがあるのかを紹介したいと思います。

  

同性婚は2005年に法制化

スペインでは、2005年7月3日から同じ性を持つ2人の婚姻(同性婚)が法律で認められています。

同性婚が認められて初めて結婚した同性カップルはマドリードのカルロス・バトゥリさんとエミリオ・メネンデスさん。2人の結婚式には多くの報道陣が集まり、30年もの間連れ添った後にようやく家族になることができた2人に対してたくさんの祝福の声が送られました。

この法が制定された時、当時のホセ・ルイス・サパテロ首相は演説でこう述べています。「皆さん、私たちは遠くにいる奇妙な人たちに向けて法制定をしているわけではありません。私たちは私たちの隣人、仕事仲間、友人、家族が幸せになる機会を広げるとともに、よりまともな国を構築しているのです。まともな社会というのは、国民たちを辱めることのない社会です。」

オランダ、ベルギーに続いて世界で3番目に同性婚を認める国となったスペインでは、これまで4万組を超える同性カップルが法的に夫婦として認められてきました。

スクリーンショット 2023-02-03 午後10.09.33.png

サパテロ元首相(左)とスペイン初の同性夫婦(右)2015年に行われた会合©️YouTube - El orgullo gay de Zapatero (vídeo realizado en 2015)

スペインに住んでいて同性カップルを見かけることは珍しくありませんし、同性カップルに対して冷たい視線を向ける人を見ることもありません。同性カップルの存在はもはや当たり前の存在なので、同性婚に対して周りの友人に意見を聞いても「普通じゃない?好きな人と一緒にいたいなら勝手にすればいいと思うよ。自分たちには関係ないし。」と、特に男女のカップルと区別していないという印象を受けました。家族観や価値観は他人の結婚で変わるものなのでしょうか。具体的にどう変わるのか私には想像がつきません。愛し合う2人が夫婦になることの何がいけないのでしょう。

  

16の家族の形を発表

同性婚を認めて17年。スペイン社会は多様性へ向けて年々変化しています。去年12月、社会権省のロネ・べララ大臣は新しい「家族法」を発表しました。

この法律には3歳未満の扶養児童1人につき月100ユーロの子育て支援、2親等以内の親族や同居人の世話(怪我・病気等)をするための年5日の有給介護休暇、子どもが8歳になるまで継続・中断可能な8週間の育児休暇などの内容が含まれています。そのほかに「父親・母親・子供」という従来の家族のステレオタイプを取り除き、多様性教育や補助金支給に役立てるために「16タイプの家族」というリストも今回の法で定められました。

リストには「片親家族」「同性婚家族」「養子縁組家族」「事実婚家族」から、「複数民族家族」「多国籍家族」「移民家族」「貧困家族」など16種類にわたる家族の形が記載されています。今後これらは学校の多様性教育にも組み込まれていくそうです。

 

社会は変わらなければいけない

今回はスペインの同性婚や家族の多様性について紹介しましたが、世界でこのような動きがどんどん進んでいます。2019年には隣国台湾が、2022年にはチリ、スイス、スロヴェニア、キューバが同性婚を法制化しているのです。社会や世界の価値観がどんどん変化し前進している中で、それらの変化を恐れて古い当たり前にすがりつき立ち止まってしまうことは、世界からどんどん遅れをとっていくことを意味するでしょう。「よそはよそ、うちはうち」と言われたらそれまでですが、それは日本が所詮それまでの国であることを認めることになるのではないでしょうか。私は日本も同性婚を法制化するべきだと思いますし、法制化をしないということは差別だと認識しています。

最後に、有名な2013年にニュージーランドの議員による同性婚に関するスピーチを載せておきます。岸田総理や同性婚に反対している議員さんたちに届きますように。

※タイトル・本文に一部不適切な表現がありましたので訂正しました。(2023年2月7日10時40分)
 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

2015年スペイン巡礼(カミノデサンティアゴ)フランス人の道を完歩。スペイン語習得のために渡ったコロンビアでコーヒー農家になるもスペイン移住の夢が捨てられず、現在はコロンビアのコーヒー事業を継続しながらマドリードのベッドタウンでひっそりとスペインライフを満喫中。

Twitter: @maon_maon_maon

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ