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ロシアが遂に「がんワクチン」開発に成功か...60~80%で症状改善、最新発表の「意味」を専門家に聞く

Russia Cancer Vaccine: What To Know About Enteromix Claims

2025年9月9日(火)17時24分
ハンナ・ミリントン

本誌は、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの臨床科学者で、腫瘍内科医のデイヴィッド・ジェームズ・ピナト氏(Dr. David James Pinato)に、このワクチンに対する見解を尋ねた。

ピナト氏は、「公開されているデータの質が不明確なため、ロシアのがんワクチンが現在、開発のどの段階にあるのか、科学的な観点からは正確に把握できない」と語っている。

ピナト氏は、前臨床試験とは通常、動物実験を指すため、有効性を確認するには今後人間でのさらなる試験が必要になると説明した。

「仮に、動物実験で100%の有効性が得られたとしても、それだけでは何の意味もない」と同氏は指摘する。「なぜなら、こうしたワクチンの試験に使われるマウスなどの動物モデルの免疫系は、人間のがんゲノムや免疫システムの複雑さを再現していないことが多いからだ」

さらにピナト氏は、「もしこれが本当に前臨床レベルの結果であれば、興味深く、将来的に薬剤開発につながる可能性はある」と評価しつつも、「現時点では臨床使用を支持できる段階にはない」と慎重な姿勢を示した。

ピナト氏は、一部メディアでワクチンが第I相試験に入っているとの報道があることについても言及。「第I相試験とは、薬剤を初めて人間に投与する段階で、安全性を確認することが目的であって、有効性を判断するものではない」と説明した。

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