最新記事
考古学

キリストを包んだとされる「聖骸布」はやはり偽物だった?...中世の時点で既に告発されていた

Discovery Reveals We've Been Debunking the Shroud of Turin for 650 Years

2025年9月4日(木)18時35分
マリア・アズーラ・ボルペ
イエス・キリストのイラスト

イエス・キリストをくるんだといわれる亜麻布は本物なのか Jaroslav74-shutterstock

<キリストの遺体を包んだとされる「トリノの聖骸布」。新たに発見された14世紀の文書で告発されていた内容とは>

イエス・キリストの磔刑後に遺体を包んだと信じられている聖遺物、「トリノの聖骸布」。この長さ4.3メートルの亜麻布には、大昔からその真贋に疑念が投げかけられていた。

【画像】トリノの聖骸布

新たに発見された中世の文書によって、早くて1355年の時点で既に本物かどうかが疑問視されていたことが明らかになった。


英学術誌『中世史ジャーナル(Journal of Medieval History)』に8月28日に発表された分析によると、この文書は1355年から1382年の間に執筆された可能性が高く、とりわけ1370年以降の成立が有力視されている。

同文書では、人々から尊敬を集め後にフランス・リジューの司教となったノルマンディーの神学者ニコル・オレームが、聖骸布を「明白」かつ「露骨な」偽物で、聖職者たちによる欺瞞の産物だと断じている。

オレームによる「聖骸布」批判は、これまで最古とされていた1389年のトロワ司教ピエール・ダルシによるものよりも古く、現存する最古の否定的見解ということになる。

ただ、ダルシによると1355年頃には彼の前任者も同様の見解を示していたという。

オレームの文書は著名な歴史家、アラン・ブーローとベアトリス・ドロランティによって発見された。文書内では教会への献金を募るために「奇跡」を捏造したと聖職者たちが非難されており、その一例として、フランスのリレーに展示されていた聖骸布が挙げられている。

「ニコル・オレームが聖職者による詐欺の例として取り上げたのは、どこにでもあるような信仰対象ではなかった。シャンパーニュ地方のリレーの聖堂が所持していると主張していた聖骸布が、聖職者によって仕組まれた虚偽の際立った一例として選ばれた」と、文書を分析したベルギーのルーバン・カトリック大学の歴史学者ニコラ・サルゾーは述べる。

「オレームの記述が際立っているのは、説明のつかない現象に対して、それを神や悪魔によるものと解釈するのではなく、合理的な説明を与えようとした点だ。彼は証人の証言を、信頼性などによって評価し、根拠のない風説に警鐘を鳴らしていた」

投資
「FXで長期投資」という投資の新たな選択肢 トライオートFX「世界通貨セレクト」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

情報BOX:高市早苗内閣の顔ぶれ

ワールド

官房長官に木原稔氏、財務相に片山氏=新内閣人事

ワールド

高市内閣が発足へ、維新との連立政権 財務相に片山氏

ワールド

高市新首相、午後10時から記者会見
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 6
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中