キリストを包んだとされる「聖骸布」はやはり偽物だった?...中世の時点で既に告発されていた
Discovery Reveals We've Been Debunking the Shroud of Turin for 650 Years

イエス・キリストをくるんだといわれる亜麻布は本物なのか Jaroslav74-shutterstock
<キリストの遺体を包んだとされる「トリノの聖骸布」。新たに発見された14世紀の文書で告発されていた内容とは>
イエス・キリストの磔刑後に遺体を包んだと信じられている聖遺物、「トリノの聖骸布」。この長さ4.3メートルの亜麻布には、大昔からその真贋に疑念が投げかけられていた。
新たに発見された中世の文書によって、早くて1355年の時点で既に本物かどうかが疑問視されていたことが明らかになった。
英学術誌『中世史ジャーナル(Journal of Medieval History)』に8月28日に発表された分析によると、この文書は1355年から1382年の間に執筆された可能性が高く、とりわけ1370年以降の成立が有力視されている。
同文書では、人々から尊敬を集め後にフランス・リジューの司教となったノルマンディーの神学者ニコル・オレームが、聖骸布を「明白」かつ「露骨な」偽物で、聖職者たちによる欺瞞の産物だと断じている。
オレームによる「聖骸布」批判は、これまで最古とされていた1389年のトロワ司教ピエール・ダルシによるものよりも古く、現存する最古の否定的見解ということになる。
ただ、ダルシによると1355年頃には彼の前任者も同様の見解を示していたという。
オレームの文書は著名な歴史家、アラン・ブーローとベアトリス・ドロランティによって発見された。文書内では教会への献金を募るために「奇跡」を捏造したと聖職者たちが非難されており、その一例として、フランスのリレーに展示されていた聖骸布が挙げられている。
「ニコル・オレームが聖職者による詐欺の例として取り上げたのは、どこにでもあるような信仰対象ではなかった。シャンパーニュ地方のリレーの聖堂が所持していると主張していた聖骸布が、聖職者によって仕組まれた虚偽の際立った一例として選ばれた」と、文書を分析したベルギーのルーバン・カトリック大学の歴史学者ニコラ・サルゾーは述べる。
「オレームの記述が際立っているのは、説明のつかない現象に対して、それを神や悪魔によるものと解釈するのではなく、合理的な説明を与えようとした点だ。彼は証人の証言を、信頼性などによって評価し、根拠のない風説に警鐘を鳴らしていた」