まるで「文化爆弾」...中国が北朝鮮の「支配」を狙い展開する「中国版ソフトパワー外交」の実態
China’s Cultural Offensive
経済統合も中国の影響力強化戦略の重要な柱だ。中国の電子機器メーカーが半導体の開発などで北朝鮮企業と提携しているのはその表れとみていい。北朝鮮側はレアアースを提供し、中国側はその見返りに基幹部品を提供している。
中国の狙いは貿易の拡大にとどまらない。北朝鮮を北東アジアの産業・サプライチェーン網に組み込み、この地域における自国の経済覇権を強化する思惑が透けて見える。
南北統一の夢が遠のく
中国は情報戦略を現実的な国境管理にも役立てようとしている。脱北者の流入を完全に防ぐことは難しいが、必ずしもその必要はないと中国当局は考えている。脱北者の大量流入は避けたいとしても、一定数の流入なら安価な労働力として利用できるからだ。そのため北朝鮮の現体制の安定を支えつつ、自国の戦略的利益に資する範囲内で脱北者を受け入れようとしている。
コンテンツの浸透で北朝鮮の人々が中国に良いイメージを持てば、それは脱北者の動きにも影響を与えるだろう。情報作戦が成功すれば、脱北者の多くは中国との国境を越えた後、危険な旅を続けて韓国やアメリカを目指すよりも、中国にとどまるほうが得策だと考えるようになるはずだ。