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職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳女性、会社が裁判でとんでもない主張を...

2025年7月2日(水)11時25分
印南敦史(作家、書評家)

恋人に振られたことが原因だったと、会社が嘘の主張


 しかし、会社や加害者(以下、会社側)はいじめの事実を否定するだけでなく、佳子さん(筆者注:綾奈さんの母)曰く「でっちあげや嘘の証拠を次々と提出してきた」。その一つが、綾奈さんの死は職場環境が原因ではなく、社内にいた恋人に振られたことが原因だったという主張だ。
 会社側は「綾奈氏が自殺する直前に(同僚の相手男性)の意思によって交際を終了しており、このことが綾奈氏の自殺の原因である可能性がある」と主張したが、そもそも綾奈さんは振られていないどころか、この男性と交際すらしていなかったのだ。(44〜45ページより)

交際しているとでっちあげられた相手の男性は、裁判所に提出された書面で「何より、私は綾奈さんと交際していません。......ここまで根も葉もない嘘をつかれると呆れ果ててものも言えません。亡くなった綾奈さんにとっても名誉毀損だと思いますが、私にとっても名誉毀損ではないでしょうか。非常に不愉快です」と怒りをあらわにしたそうだ。

こうした会社側に対し、名古屋地裁は2017年1月、叱責が不法行為であったことは認めつつも、それが自死の原因だったとはいえず、会社にも自死を事前に予見できなかったとして、わずか計400万円を会社側が遺族に支払うよう命じる判決を下した。

加害者2人からのいじめやハラスメントの事実は認めたが、それが綾奈さんの自死の原因であるとは断定できないということだ。つまりは、会社側の裁判戦略が成功したのだった。

納得できなかった家族が名古屋高裁に控訴した結果、会社側の責任も認める逆転勝訴判決が下されたのは2017年11月のこと。

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