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職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳女性、会社が裁判でとんでもない主張を...

2025年7月2日(水)11時25分
印南敦史(作家、書評家)

「会社に来たら営業妨害で訴える」と態度を硬化

両親が会社に連絡すると、(会社から病院までは30分程度しかかからない距離であるにもかかわらず)2時間ほどして役員が到着した。職場環境が原因で精神的に追い詰められたと考えていた家族は説明を求めたが、黙ったままでお悔やみの言葉すらなかったという。

しかも、さらなる説明や証拠を求め何度か会社を訪問するも、亡くなった直後は歩み寄りを見せていた会社側は手のひらを返し、「会社に来たら営業妨害で訴える」と態度を硬化させた。

これは、裁判や労災申請などの具体的なアクションを遺族が準備していると会社が警戒したからだろうと著者は述べている。

自死から1年後に家族が労災を申請したところ、会社側は「加野青果株式会社としては、(ハラスメント加害者X)及び(ハラスメント加害者Y)が長期にわたり伊佐間綾奈様をいじめた事実や配置転換後に支援をしなかったなどの事実はないと考えており、事業主として証明することはできません」という内容の手紙を労基署に提出し、いじめを否定した。

2014年3月、遺族は会社といじめ加害者である綾奈さんの上司2人に対し、合計約6500万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に提起。2人の加害者は長期にわたって陰湿ないじめやハラスメントを繰り返した責任が、会社にはそうした状況を放置し続けて改善するための策を講じなかった責任があると遺族は主張した。

ここに至るまでには相当以上の紆余曲折があったわけだが、このあとまた信じ難いことが起こる。

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