社会を支えるエッセンシャルワークでも止まらない、急速な雇用の「非正規化」

過去20年で図書館職員の非正規化が急速に進んだ(画像はイメージ写真) photoAC
<今世紀に入って以降、特に教育や文化といった「官」の分野で非正規化は一気に進行した>
熊本市電の運転士80人中79人が、非正規の会計年度任用職員だという(今年4月時点)。雇用の非正規化の極地だ。現場からは「仕事内容や責任の重さに賃金が対応しておらず、生活が不安」といった声が聞かれ、市議会でも「処遇の改善が大事」という認識が示されている。
雇用の非正規化は時代と共に進んでいて、2020年の『国勢調査』によると、有業者5657万9920人のうち1613万4920人(28.5%)が、派遣社員・パート・アルバイトといった非正規雇用だ。今では、働く人の3人に1人が非正規雇用となっている。
「多様で柔軟な働き方が広がっている」と言えば聞こえはいいが、待遇が悪い「雇用の調整弁」のような性格が否めない。「非正規」という呼称からも、ネガティブなイメージが感じられる。従業員を非正規に置き換える経営側が目論んでいるのは、もっぱら経費の削減だ。
雇用の非正規がどれほど進んでいるかは、業種によって大きく異なる。232の職業の非正規雇用割合を計算すると、0.0%から78.3%まで広く分布している。<図1>は、5%刻みの度数分布図だ。
最も多いのは、非正規割合が5%以上10%未満の階級で44の職業が該当する。しかし、値が高い職業もある。7つのエッセンシャルワークの位置を示しているが、訪問介護職員では64.2%、図書館司書・学芸員では54.9%。これから需要が高まる、人のケアを担う専門職(保育士、介護士)の非正規率も高い。
自動車運転手はおよそ2割。バス運転手の非正規化も、よく耳にするところだ。教員の非正規率も高まってきている。教員不足が言われるが、需要があるのは産休代替の穴を埋める非正規教員だ。鉄道運転手は2.1%と低いが、冒頭で見た熊本市電のように非正規化を極限まで進めている会社や自治体もある。人の命を預かる仕事だけに、劣悪な条件で働かせることは、重大事故にもつながりかねない怖さがある。