社会を支えるエッセンシャルワークでも止まらない、急速な雇用の「非正規化」
あまり知られていないが、雇用の非正規化のスピードが速いのは「官」の世界だ。特に教育や文化の領域で、それが著しい。たとえば図書館。この20年ほどで、図書館で働く職員は倍近くに増えたものの、増えているのは非常勤や指定管理者の職員だ(専任職員は減少)。これらの職員が全体に占める割合は、1999年度では28.9%だったが2021年度では71.0%まで高くなっている。
この値を都道府県別に出し、塗り分けた地図にすると衝撃的な模様になる<図2>。
1999年度では3つの県で4割を超えていただけだったが、2021年度ではほとんどの県で6割を超えている。首都の東京では80.6%、最も高い広島では85.1%だ。この20年ほどで、図書館職員の非正規化が急速に進んでいることが、はっきりと示されている。
少子高齢化が進み生涯学習需要が増していることもあり、地域の図書館の役割が重要になってきている。だがそこで働く人の多くが非正規雇用だ。中には正規(専任)職員と同じ仕事もしている人もいて、生活への不安と同時に、待遇への不満も渦巻いているだろう。サービスの質の低下にもつながりかねない。
多様で柔軟な働き方は否定しない。だがそれは、真っ当な暮らしができる賃金と、人としての尊厳が保たれる、という条件において、だ。諸外国では、日本のような「正規・非正規」という区切りはない。同一労働同一賃金を徹底し、かつ「正規・非正規」というような呼称も改める時期に来ている。