台湾のソフトパワー「小籠包」の美味が世界を席巻する!?

Soup Dumplings as Soft Power

2025年3月7日(金)16時28分
リシ・アイエンガー(フォーリン・ポリシー誌記者)

正式な大使館を世界にわずか12カ国にしか持っていない台湾にとって、鼎泰豐の世界進出はソフトパワーの勝利といっていい。その世界的な人気は台湾の国際的な認知度の向上に貢献し、鼎泰豐は台湾にルーツを持つことを誇りとしている。

創業者の孫で、アメリカ事業を兄弟で率いるアーロン・ヤンは一昨年、ロサンゼルス・タイムズ紙に「私たちは常に、発祥の地である台湾の本物の味を大切にしたいと強く感じている」と語っている。


台湾料理は移民料理

鼎泰豐の看板メニューである小籠包の発祥は台湾ではなく、中国本土で18世紀か19世紀に考案されたともいわれている。たとえそうだとしても、台北在住のフードライターであるリズ・カオのような人にとっては、鼎泰豐の小籠包が台湾料理としての正統性を損なうことにはならない。

「台湾料理は移民の料理」と、カオは言う。台湾の料理は数十年にわたる人々の流入によって形づくられてきたと、彼女は説明する。1900年代初頭の福建省や広東省からの移民、1895〜1945年の日本統治時代、そして49年の内戦終結後の中国本土からの大量移住など、それぞれのグループがそれぞれの食材と味覚をもたらした。

「このミックス自体が、独特のアイデンティティーを形成していると思う」と、カオは言う。「私たちは台湾独自のアイデンティティーを確立しようとしており、台湾料理は中国料理とは別物だと言いたい」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アルコア、第2四半期の受注は好調 関税の影響まだ見

ワールド

英シュローダー、第1四半期は98億ドル流出 中国合

ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=

ビジネス

インタビュー:高付加価値なら米関税を克服可能、農水
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中