最新記事
ウクライナ情勢

ウクライナ、ロシア国境奥深くの石油施設に猛攻 アメリカは不満

Ukraine Strikes Russian Oil Depot Deep Behind Enemy Lines

2024年5月28日(火)15時51分
イザベル・バンブルーゲン

ロシアとウクライナは互いに相手のエネルギー施設を攻撃している(写真はロシアの攻撃を受けたウクライナ南部オデッサの石油施設。2022年4月3日) Photo by Nina Lyashonok/Ukrinform/ABACAPRESS.COM

<ウクライナ政府は、西側諸国から供与された兵器を用いてロシア領内の標的に対する攻撃を行うことについて、支援国からの許可を得ようとしてきたが、アメリカはまだ認めていない>

ウクライナ軍のドローンが、またしてもロシアの領土内にある石油施設を攻撃したと、ロシア現地の州知事が明かした。

2機のドローンが、ロシア西部オリョール州の町、リーヴヌィの石油施設に突っ込んだと、同州知事のアンドレイ・クリチコフは5月27日、自身のテレグラムチャンネルで伝えた。リーヴヌィは、ウクライナとの国境から約320キロ離れている。

 

この攻撃で1人が死亡、3人が負傷したと、同知事は付け加えた。管理棟にも損害が出たという。

【動画】Xに投稿された石油施設攻撃のクローズアップ映像

ウクライナは2024年に入り、ロシアの石油精製施設に対する攻撃を強化している。なかでも、ウラジーミル・プーチン大統領の戦時経済を支えるガソリン生産の妨害を焦点にしている。

ウクライナ軍の情報機関によると、ロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、ロシアのなかでも最大級の規模の石油精製施設に対して行ったきた。そのうち少なくとも13回は成功を収めたという。その結果、ロシアの石油精製能力の少なくとも14%が失われたと、米国防総省の情報機関、国防情報局(DIA)は5月に発表している。

ウクライナのオリハ・ステファニシナ副首相は3月の時点で、ロシアの石油精製施設は、ウクライナにとって正当な軍事目標だと発言した。

直近の攻撃については、今のところウクライナ側からのコメントはない。

ウクライナは見切り発車

オリョール州のクリチコフ知事は、「救急サービスならびに市行政当局の職員が即座に現場に到着し、鎮火作業に携わると共に、火災後の状況に対処した」と書いている。

今回の攻撃の少し前には、5月9日のガスプロムのネフチキム・サラヴァト石油精製所に対して行われたドローン攻撃について、ウクライナの情報機関が同国の関与を認めていた。ウクライナとの国境からは1600キロも離れた製油所だ。

ウクライナの保安当局は4月、タタールスタン共和国にあるロシアの石油精製所に対するドローン攻撃についても、自国の関与を認めた。こちらは、ウクライナとの国境から約1300キロ弱離れている。

ウクライナ政府は、西側諸国から供与された兵器を用いてロシア領内の標的に対する攻撃を行うことについて、支援国からの許可を得ようとしてきた。

だが米国防総省のチャーリー・デイツ報道官は5月中旬、本誌の取材に対し、アメリカは「ロシア領内への攻撃は支持しないと、ウクライナには非常に明確に示している」と発言した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英小売売上高、10月は5月以来の前月比マイナス 予

ワールド

マクロスコープ:円安・債券安、高市政権内で強まる警

ワールド

ABC放送免許剥奪、法的に不可能とFCC民主党委員

ワールド

アングル:EUの対中通商姿勢、ドイツの方針転換で強
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 5
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中