最新記事
弾道ミサイル

北朝鮮の「極超音速兵器」がゲームを変える...中距離弾道ミサイルにHGVを搭載したのは世界で初めて

A New Missile Era

2024年4月25日(木)17時10分
A・B・エイブラムズ(米朝関係専門家)
アジア・太平洋地域の安全保障環境を変えかねない火星16Bの試射を視察した金総書記(4月2日) KCNAーREUTERS

アジア・太平洋地域の安全保障環境を変えかねない火星16Bの試射を視察した金総書記(4月2日) KCNAーREUTERS

<アメリカがINF条約離脱後に太平洋で進めるミサイル防衛増強計画に、北朝鮮の新型ミサイルが揺さぶりをかける>

北朝鮮は4月2日、新型の中距離弾道ミサイル「火星16B」の発射試験を実施した。飛躍的な性能向上を実現するため何年も前から関連技術の試験を重ね、満を持して実射試験に踏み切ったのだ。

【動画】火星16Bの試射の様子

北朝鮮は2000年代に公開したムスダン(火星10)を皮切りに、推定射程4000~5000キロの中距離弾道ミサイルを次々に開発。太平洋全域をカバーする米軍の防衛力を支える重要基地を攻撃できる兵器の保有を目指してきた。特にグアム島のアンダーセン空軍基地と海軍基地は北朝鮮の重要な攻撃目標で、射程4300キロならマーシャル諸島の北に位置する米領ウェーク島の施設も攻撃できる。

これらの基地や施設が攻撃されれば、西太平洋における米軍の防衛能力は大幅に限定される。何十年もアメリカと対峙してきた北朝鮮にとって、それは願ってもない状況だ。

北朝鮮はグアム島を射程内に収めることに並々ならぬ執念を燃やしてきた。この島はアメリカの東アジア戦略における重要な拠点というだけではない。アメリカは今この島に多額の投資をして、太平洋におけるミサイル防衛増強計画を進めている。

北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)総書記は今年3月、グアム島などの軍事施設を標的とする新型ミサイル(火星16Bとみられる)用の固体燃料ロケットの地上試験を視察した際、こう語った。「この兵器システムはわが国の安全保障上、そして人民軍の作戦上の必要性からICBM(大陸間弾道ミサイル)に劣らぬ戦略的な価値を持つ。敵もそれを重々承知しているはずだ」

火星16Bには先行型に比べ、桁外れに大きな威力を発揮できる2つの主要な特長がある。1つは固体燃料ロケットを使用していること。

固体燃料なら充塡した状態でミサイルを保管できるため、液体燃料に比べミサイルの発射準備に要する時間がごくわずかで済む。これは重要な特長だ。北朝鮮がミサイル発射に使用する移動式の「輸送起立発射機」は戦時には米軍とその同盟軍の空爆の優先的な標的になる。だから、素早くミサイルを発射して、すぐにその場を離れる必要がある。

ただ、固体燃料を採用したミサイルは特に目新しいものではない。「グアムキラー」の異名を取る中国のミサイル「東風26」も固体燃料ロケットで発射される。

とはいえ火星16Bには、それよりもはるかに革命的な、もう1つの特長がある。極超音速滑空体(HGV)を搭載していることだ。

軍拡競争の過熱を招く

北朝鮮は21年9月に初めてHGVの発射試験を行った。そして今、世界に先駆けてHGVを搭載した中距離ミサイルの実射に成功したのだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米司法省、ミネソタ州知事らを捜査 移民当局妨害の疑

ビジネス

米FRB副議長、パウエル氏支持を表明 独立性は「経

ビジネス

アングル:自動運転車の開発競争、老舗メーカーとエヌ

ワールド

米、ガザ統治「平和評議会」のメンバー発表 ルビオ氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 8
    イランの大規模デモ弾圧を可能にした中国の監視技術─…
  • 9
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 10
    122兆円の予算案の行方...なぜ高市首相は「積極財政…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 8
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中