最新記事
ウクライナ情勢

F16はなぜウクライナに届かない?──NATO事務総長が答えた

NATO chief notes "dilemma" in supplying F-16s to Ukraine

2024年2月22日(木)14時51分
ケイトリン・ルイス

ウクライナへの供与を進めるため昨年11月に発足した「欧州F16訓練センター」(ルーマニア・フェテシュティ空軍基地)Photographer/IPA via Reuters Connect

<昨年末あたりから来る、来ると言われて一向に来ないF16。このままでは、要衝アウディーイウカのように防空が十分でないためにまた撤退に追い込まれるのではないか>

NATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長は2月20日、ウクライナが待ち望んでいるF16戦闘機の供与について、いつになるかは不明だと発言した。西側の同盟諸国が現在、ウクライナ軍のパイロットの訓練に励んでいるところだという。

ストルテンベルグはラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティーに対して、「具体的にいつ供与できるかは言えない。難しい問題だ」と説明し、「我々はみんな、できる限り迅速にF16をウクライナに引き渡したいと考えている」と述べた。

 

彼はさらに「だが当然ながら、F16は訓練を重ねたパイロットが操縦した方がより強力でより優れた威力を発揮する」と述べた。「パイロットだけでなく、保守管理をはじめとするあらゆるサポート体制が整っている必要がある」

F16の訓練については、NATO加盟国の連合が主導してアメリカ、イギリス、デンマーク、ルーマニアで行われている。ウクライナ空軍のユーリ・イフナト報道官は1月、この訓練プログラムに参加しているパイロットたちが「指導員同乗のもと実際に空を飛んでいる」と述べており、ウクライナのドミトロ・クレバ外相は、春以降にもF16運用の準備が整うはずだと述べていた。

パイロットとサポートが必須

だがストルテンベルグはラジオ・リバティーに対して、NATOとして「加盟国がF16の引き渡しをいつから始められるのか、軍事専門家の意見に耳を傾ける必要がある」と言う。「F16は、我々がウクライナに引き渡した時点で、十分に訓練を受けたパイロットと優れたサービス体制が整っていることで威力を発揮する」

これまでにウクライナにF16戦闘機を供与することを決定したのはベルギー、デンマーク、オランダとノルウェーで、そのほかの複数のNATO加盟国がパイロットの訓練を支援している。「ファントム」のコールサインで呼ばれるウクライナ人パイロットは2月、米政府の海外向け放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」に対して、F16に「とても感銘を受けた」と述べ、F16をっ実戦で運用する準備は「計画どおり本格的に進んで」いると述べた。

ファントムは「F16は期待以上だった」と言う。「訓練中に得た情報だけでも、この戦闘機にどれだけウクライナ空軍の航空戦力を向上させる潜在力があるのか分かる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中