最新記事
産業

世界に不可欠な存在となった台湾の「半導体」産業...「中国リスク」の高まりで、どんな影響が?

CRUCIAL TECH PARTNER

2024年1月19日(金)17時47分
マーシー・クオ(ディプロマット誌コラムニスト)
台湾の半導体産業

ファウンドリの最大手TSMCなど、台湾の半導体企業はグローバル経済の中核的存在だ ILLUSTRATION BY WILLIAM POTTER/SHUTTERSTCOK

<官民を挙げた強化戦略で生産量も技術も最高レベル、不可欠のパートナーを「中国リスク」から守るには>

台湾経済の発展に欠かせない重要な戦略産業である半導体産業。台湾の半導体は、グローバル経済でどのような位置を占め、世界にどんな影響を与えているのか。そのリスクはどこにあるのか。

NPOの米台商業協会(USTBC)副会長で、同協会が昨年6月に共同発表した報告書「アメリカと台湾と半導体──決定的サプライチェーンパートナーシップ」をまとめたロッタ・ダニエルソンに、ディプロマット誌コラムニストのマーシー・クオが話を聞いた。

◇ ◇ ◇


──半導体サプライチェーンにおける台湾の重要な役割とは?

この40年間に半導体産業を強化した台湾では、政府や企業、外国企業がこぞって半導体部門に投資した。おかげで幅広い技術領域で相当な生産量を担い、膨大な数のサプライヤーや製造業者が強力な半導体エコシステム(生態系)を作り上げている。

台湾は米企業のアップルやNVIDIA(エヌビディア)の重要な供給元で、世界各地の主要テクノロジー企業にとって不可欠な存在だ。台湾積体電路製造(TSMC)、UMC、世界先進積体電路(バンガード)、力晶半導体の4社の半導体受託製造(ファウンドリ)市場シェア率は昨年1~3月期、合わせて69%に達した。

TSMCを代表格とする台湾のファウンドリ企業は世界生産量の大部分を占めている。プロセス(半導体チップの微細さ)で最小の加工精度の最先端技術や、300ミリウェハーの分野では、特に顕著だ。

10ナノメートル未満の半導体の生産量に台湾が占める割合は、世界最大の63%。7ナノと5ナノの半導体では92%に上る。5ナノ以下の場合、量産しているのはTSMCと韓国のサムスンの2社だけだ。TSMCは最先端の3ナノ半導体の利用拡大を推し進め、新たな技術も開発している。

先端半導体での優位性が注目されるが、自動車・家電製品向け半導体でも台湾の存在感は大きい。2022年の半導体設備投資先ランキングでは、台湾が世界2位だった。

台湾には、生産能力とノウハウが集中している。半導体産業の複雑性や生産能力の新規構築に要する巨額のコストを考えると、台湾製半導体に代わる存在をつくり上げるのはすぐにできることではなく、数年単位の時間がかかるだろう。

台湾製半導体へのアクセスを失えば、アメリカのGDPは5~10%低下しかねず、新型コロナのパンデミックを上回る打撃を受ける可能性がある。米情報当局の推定では、台湾製半導体が入手不能になれば、グローバル経済は当初の数年間、1年当たり最大1兆ドルの損失を被る見込みだ。半導体アクセスは先端兵器生産の原動力であるため、アメリカの安全保障にも深刻な影響が出るだろう。

ヘルスケア
腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中