中国ナンバー2に上り詰めた「目立たない男」蔡奇(ツァイ・チー)...習近平の私的な懐刀の「重責」とは
CAI QI
TINGSHU WANGーREUTERS
<習近平の腹心が中国のナンバー2に。異例の3期目の権力固めと「懐刀」の微妙な立ち位置。本誌「ISSUES 2024」特集より>
2023年春に中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、中国共産党序列5位の蔡奇(ツァイ・チー)政治局常務委員を事実上のナンバー2に昇格させた。蔡は、北京市長だった17年に「低端人口(底辺住民)」をほぼ一夜で強制排除した功績があるくらいで目立たない存在だった。それが今や、習の公的かつ私的な懐刀だ。
習は「スパイ長官」の肩書を2つ、蔡に与えた。1つは「党中央弁公庁主任」で、あらゆる通信暗号システムと機密情報を管理する絶対的な権限を持ち、党と国家のトップレベルの高官の安全を保護する。要するに、ボスのために彼らを24時間365日厳しく監視するのだ。
共産主義者の最高幹部同士の関係は、常に取引
もう1つの肩書は「中央・国家工作委員会書記」で、国内外の組織に組み込まれた党細胞を統括する。
蔡は習が福建省と浙江省で勤務していた時代からの忠実な部下で、近年は臆面もなくへつらっている。ただし、「深い信頼」という言葉は必要ない。冷徹な共産主義者の最高幹部同士の関係は、常に取引だ。
紀元前3世紀の思想家、韓非子(中国の元祖マキャベリストでもある)は中国の皇帝と重臣の関係を、考えは相いれないが等しく冷酷な策略家たちが、打算的で日和見主義的な均衡を装っていると見抜いていた。
毛沢東は羅瑞卿と康生という2人のスパイ長官を重宝した。だが羅は文化大革命下に失脚。康は毛より早く死去し、死後に党を除名された。蔡も似たような運命が待ち受けているのかもしれない。
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