最新記事
世界のキーパーソン2024

中国ナンバー2に上り詰めた「目立たない男」蔡奇(ツァイ・チー)...習近平の私的な懐刀の「重責」とは

CAI QI

2023年12月23日(土)14時26分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)
蔡奇(ツァイ・チー)

TINGSHU WANGーREUTERS

<習近平の腹心が中国のナンバー2に。異例の3期目の権力固めと「懐刀」の微妙な立ち位置。本誌「ISSUES 2024」特集より>

2023年春に中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、中国共産党序列5位の蔡奇(ツァイ・チー)政治局常務委員を事実上のナンバー2に昇格させた。蔡は、北京市長だった17年に「低端人口(底辺住民)」をほぼ一夜で強制排除した功績があるくらいで目立たない存在だった。それが今や、習の公的かつ私的な懐刀だ。

習は「スパイ長官」の肩書を2つ、蔡に与えた。1つは「党中央弁公庁主任」で、あらゆる通信暗号システムと機密情報を管理する絶対的な権限を持ち、党と国家のトップレベルの高官の安全を保護する。要するに、ボスのために彼らを24時間365日厳しく監視するのだ。

共産主義者の最高幹部同士の関係は、常に取引

もう1つの肩書は「中央・国家工作委員会書記」で、国内外の組織に組み込まれた党細胞を統括する。

蔡は習が福建省と浙江省で勤務していた時代からの忠実な部下で、近年は臆面もなくへつらっている。ただし、「深い信頼」という言葉は必要ない。冷徹な共産主義者の最高幹部同士の関係は、常に取引だ。

紀元前3世紀の思想家、韓非子(中国の元祖マキャベリストでもある)は中国の皇帝と重臣の関係を、考えは相いれないが等しく冷酷な策略家たちが、打算的で日和見主義的な均衡を装っていると見抜いていた。

毛沢東は羅瑞卿と康生という2人のスパイ長官を重宝した。だが羅は文化大革命下に失脚。康は毛より早く死去し、死後に党を除名された。蔡も似たような運命が待ち受けているのかもしれない。


ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中