最新記事
登山

エベレストで九死に一生を得た登山家、命の恩人よりスポンサーに感謝で「恩知らず」と批判殺到

2023年6月9日(金)11時25分
川口陽
エベレスト登山

(写真はイメージです) DanielPrudek-iStock

<標高8000メートルの世界で命懸けの救助を成功させたシェルパに称賛が集まる中、助けられた当の本人はその事実を認めたくない様子?>

【映像】エベレスト頂上付近で発見した瀕死の登山者を背負って下山するシェルパ

世界最高峰エベレストの山頂付近で身動きが取れなくなっていた登山家が、別の登山隊のシェルパ(登山ガイド)によって救助され、奇跡的に生還した。しかし、この登山者の下山後のソーシャルメディア投稿の内容に非難が殺到している。

先月18日、マレーシアの登山家ラヴィチャンドラン・タルマリンガムは、標高8300メートルの地点で酸素が尽きてロープにしがみついていたところを、中国の登山隊をサポートしていたシェルパのゲルジェに発見された。一刻を争うと判断したゲルジェとグループは登頂を断念し、危険な状態にあったラヴィチャンドランをゲルジェが寝袋などで包んでキャンプ4(標高7900メートル)まで背負って下山。そこから他のシェルパの助けも借りてキャンプ3(標高7300メートル)まで下り、ヘリでベースキャンプに搬送された。その後、病院に運ばれたラヴィチャンドランは一命を取り留めた。

極めて困難な救助を成功させたゲルジェはもちろん、人命を優先して登頂を諦めた登山隊にも登山界を中心に称賛が集まっている。

しかし、ここからが問題だ。容態の回復したラヴィチャンドランは帰国し、自身のインスタグラムでこの救出劇について言及。そこには救助隊と協賛企業への感謝が綴られているだけで、肝心のゲルジェらシェルパの名はなかった。さらにはゲルジェのアカウントをブロックまでしていることが英インディペンデント紙をはじめ複数の海外メディアによって報じられている。

これに対し、ソーシャルメディア上には「なぜ恩人の名前を載せないのか」とラヴィチャンドランの態度を疑問視するコメントが相次いだ。なかでも、問題の投稿をスクリーンショットした画像に反応する形で@azreenyunus10がツイートした救助映像は、9日の時点で565万回以上再生されている。

批判を受けてかラヴィチャンドラン氏はその後、別の投稿にゲルジェらシェルパの名前を記して彼らの尽力を認めた。この投稿に対し、「ありがとうございます。順調に回復していることを願っています」とゲルジェが返信すると、3000件以上の「いいね」が集まった。

AFP通信によると、エベレストでは毎年平均して約5人の登山者が死亡している。多くは高山病によるものだが、登山者は他にも低体温症や凍傷、落下、雪崩などの危険にも備えなければならない。

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


編集部よりお知らせ
ニュースの「その先」を、あなたに...ニューズウィーク日本版、noteで定期購読を開始
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」

ワールド

訂正-米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中