最新記事

パルチザン

ロシア治安機関FSBを爆破したパルチザンの正体

What Is 'Black Bridge'? Anti-Putin Group Claiming FSB Building Fire

2023年3月22日(水)17時09分
イザベル・ファン・ブリューゲン

何者かに爆破されたロシア連邦保安庁(FSB)の建物。反政府組織ブラックブリッジが犯行声明を出した(3月16日)Sergey Pivovarov-REUTERS

<ロシア連邦保安庁のビルを爆破し、犯行声明を出した反プーチン派パルチザングループ、ブラックブリッジ。ロシア国内でテロを重ねるグループの正体と目的は>

ウクライナ国境に近い南部の都市ロストフ・オン・ドンにある諜報機関、ロシア連邦保安庁(FSB)の建物で、3月16日に火災が発生した。ロシアの反プーチン派パルチザン組織「ブラックブリッジ」がみずからの犯行だと主張している。

ブラックブリッジはロシア国内で活動するいくつかのパルチザン運動のひとつで、21日にテレグラムにこの建物の爆発炎上について投稿。FSBを「偽善、暴力、不正の牙城」と断じた。

国内の治安とテロ対策を担当するFSBを襲ったこの火災で、少なくとも4人が死亡、5人が負傷したと報告されている。治安当局は公式声明で、作業場で燃料と潤滑油が燃え上がり、爆発と建物の一部崩壊を引き起こしたと発表した。

ウクライナはこの事件への関与を否定した。

ブラックブリッジは、燃料の容器に仕込んだ即席の爆破装置によって火災を発生させた、と主張している。

「FSBに雇われた人間は、国家にとって好ましくない人物に対する刑事事件をでっち上げ、起業家の事業から搾取し、民間人に対する破壊工作を手配し、反対派を拷問し、『競争相手』を物理的に排除している」と、ブラックブリッジは声明で述べた。

過激な方法で政権に抵抗

「ウクライナ侵攻が始まって以降、どのパルチザン運動も、FSBの建物や特務機関の代表者を攻撃することを、十分に検討していなかった」

例えば軍の入隊事務所への放火行為は、ロシア政府の建物に重大な損害を与えることや、「雇われて働く」個人の殺害とは、「効率と(反政府)共感度において」比較にならない、とブラックブリッジは述べている。

「無関心ではない人、過激な方法で政権に抵抗する準備ができている人、すでにそうしている人は、目標をもっと深刻なものに切り替えてほしい」と、ブラックブリッジは訴える。「恐れることはない。ロストフ・オン・ドンで行われた直接行動が、あなた方の手本となり、新たな成果、さらに大規模な成果への動機付けとなるようにしよう」

昨年2月にウラジーミル・プーチン大統領が隣国ウクライナへの本格的な侵攻を宣言した後、ブラックブリッジを含むパルチザングループは、ロシア国内でテロ攻撃を行ってきたことを認めている。

軍の入隊事務所に火炎瓶が投げ込まれ、各所で謎の火災が相次いで発生している。ウクライナでも軍用機材の輸送を阻止するために鉄道の妨害が行われた。

2022年8月にはロシアの超国家主義者アレクサンドル・ドゥーギンの娘、ダリアが殺害されたが、この事件については、別の反プーチン派パルチザン組織「国民共和国軍」が犯行声明を出している。

注目ニュースを動画で解説

ウクライナ戦争から世界の指導者と市民が学べる「5つの教訓」【注目ニュースを動画で解説】

2023年3月22日(水)20時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ウクライナ戦争「5つの教訓」

ニューズウィーク日本版-YouTube

<多大なる犠牲から得られた知恵には未来に生かせることもある。1年が経過したウクライナ戦争が教えてくれる「5つの教訓」について解説した動画から一部抜粋して紹介する>

本文を読む
武器供与

ウクライナへの米武器供与が次々前倒し──パトリオット、エイブラムスも

Retired U.S. General Reveals Where Ukraine Should Use U.S. Patriot Systems

2023年3月22日(水)15時18分
ケイトリン・ルイス

NATOの訓練に参加するためポーランドの港に到着したエイブラムス戦車(2022年12月3日) Kacper Pempel-REUTERS

<ウクライナ軍の春の反転攻勢を前に、首都やインフラを守るパトリオットを送り、戦線突破に必要な米主力戦車エイブラムスも大幅に予定を早めて供与する>

本文を読む
ウクライナ情勢

米、ウクライナへの主力戦車「エイブラムス」供与を前倒しへ

2023年3月22日(水)10時20分
「M1A1/SA」型のエイブラムス戦車

ウクライナへ供給が予定される「M1A1/SA」型のエイブラムス戦車  armyreco / YouTube

米国防総省はウクライナへの主力戦車「エイブラムス」の供与を早める計画で、今秋にも実現する可能性がある。国防総省当局者が21日、明らかにした。

本文を読む
ロシア

クレムリンはプーチンの後継者探しを始めている──プーチン抜きで

Kremlin Already Searching for Putin's Replacement: Intelligence Official

2023年3月20日(月)15時24分
アンドリュー・スタントン

ロシア大統領の椅子はいつまで? Sputnik/Mikhail Metzel/REUTERS

<ウクライナ侵攻の泥沼化で、ロシア国内のプーチン人気もじわじわ低下。すでに後継者探しの動きも見えてきた>

本文を読む
ロシア情勢

【動画】プーチンが今度は「足を引きずっていた」?──これまでの病的症状も一気見!

'Visibly Limping' Putin Visits Crimea Amid ICC Warrant: Ukraine Official

2023年3月20日(月)14時43分
ファトマ・ハレド

クレムリンからのビデオ回線を通じてクリミアの発展について話し合うプーチン(3月17日) Sputnik/Mikhail Metzel/REUTERS

<ウクライナの内相顧問が、ロシアが一方的に併合したクリミアを訪問した時のプーチンの動画をツイッターに投稿。前日には、戦争犯罪容疑でICCから逮捕状を出されたばかりだった>

本文を読む

ニュース速報

ワールド

英、中国製の監視装置撤去へ 機密性の高い政府施設か

ワールド

カナダ貿易収支、4月は輸出量が過去最高 黒字大幅拡

ビジネス

米アマゾン、「プライム・ビデオ」で広告付きプラン計

ワールド

米制裁対象の香港長官、11月開催のAPEC参加巡り

MAGAZINE

特集:最新予測 米大統領選

2023年6月13日号(6/ 6発売)

トランプ、デサンティス、ペンス......名乗りを上げる共和党候補。超高齢の現職バイデンは2024年に勝てるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    「中で何かが動いてる」と母 耳の穴からまさかの生き物が這い出てくる瞬間

  • 2

    【動画・閲覧注意】15歳の女性サーファー、サメに襲われ6針縫う大けがを負う...足には生々しい傷跡

  • 3

    ウクライナの二正面作戦でロシアは股裂き状態

  • 4

    性行為の欧州選手権が開催決定...ライブ配信も予定..…

  • 5

    ワグネルは撤収と見せかけてクーデーターの機会を狙…

  • 6

    自社株買いでストップ高!「日本株」の評価が変わり…

  • 7

    プーチンは体の病気ではなく心の病気?──元警護官が…

  • 8

    いま株価が上昇するのは「当たり前」...株高の「現実…

  • 9

    「ダライ・ラマは小児性愛者」 中国が流した「偽情報…

  • 10

    メーガン妃が「絶対に誰にも見られたくなかった写真…

  • 1

    ロシアの「竜の歯」、ウクライナ「反転攻勢」を阻止できず...チャレンジャー2戦車があっさり突破する映像を公開

  • 2

    「中で何かが動いてる」と母 耳の穴からまさかの生き物が這い出てくる瞬間

  • 3

    「日本ネット企業の雄」だった楽天は、なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」

  • 4

    「ダライ・ラマは小児性愛者」 中国が流した「偽情報…

  • 5

    米軍、日本企業にTNT火薬の調達を打診 ウクライナ向…

  • 6

    敗訴ヘンリー王子、巨額「裁判費用」の悪夢...最大20…

  • 7

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 8

    ワグネルは撤収と見せかけてクーデーターの機会を狙…

  • 9

    どんぶりを余裕で覆う14本足の巨大甲殻類、台北のラ…

  • 10

    【画像・閲覧注意】ワニ40匹に襲われた男、噛みちぎ…

  • 1

    【画像・閲覧注意】ワニ40匹に襲われた男、噛みちぎられて死亡...血まみれの現場

  • 2

    カミラ妃の王冠から特大ダイヤが外されたことに、「触れてほしくない」理由とは?

  • 3

    「ぼったくり」「家族を連れていけない」わずか1年半で閉館のスター・ウォーズホテル、一体どれだけ高かったのか?

  • 4

    F-16がロシアをビビらせる2つの理由──元英空軍司令官

  • 5

    築130年の住宅に引っ越したTikToker夫婦、3つの「隠…

  • 6

    歩きやすさ重視? カンヌ映画祭出席の米人気女優、…

  • 7

    「飼い主が許せない」「撮影せずに助けるべき...」巨…

  • 8

    世界がくぎづけとなった、アン王女の麗人ぶり

  • 9

    預け荷物からヘビ22匹と1匹の...旅客、到着先の空港…

  • 10

    キャサリン妃が戴冠式で義理の母に捧げた「ささやか…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中