最新記事
日韓関係

日韓シャトル外交再開......韓国・ユン大統領、今後の国内支持率で方針転換する可能性は?

2023年3月17日(金)18時11分
佐々木和義

韓国の尹(ユン)大統領と岸田首相は、シャトル外交の再開を確認した......Kiyoshi Ota/REUTERS

<韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が来日して岸田文雄首相と会談、シャトル外交の再開を確認したが......>

3月16日、韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が来日して岸田文雄首相と会談、シャトル外交の再開を確認した。

シャトル外交は、日本の総理大臣と韓国の大統領が相手国を相互訪問して両国間の課題などを話し合うもので、2004年7月、小泉純一郎首相が訪韓、盧武鉉大統領と済州島で会談を行い、返礼として同年12月、盧武鉉大統領が小泉純一郎首相と鹿児島県の指宿で会談を行った。数度の中断と再開を繰り返したが、李明博大統領が竹島に上陸した2012年以降、完全に途絶えていた。

韓国大統領の訪日は2018年5月の日中韓首脳会談以来4年10か月ぶりで、岸田首相と尹大統領の会談は2022年11月13日にカンボジアで開催されたASEAN関連首脳会議以来、4か月ぶりとなる。

日韓関係は、事実上の絶縁関係になっていたが

日韓両国は、竹島問題、慰安婦、元労働者(徴用工)、輸出管理などで事実上の絶縁状態となっていた。

慰安婦問題は、日本側は2015年の合意で解決したという立場だが、文在寅前大統領が覆した。元労働者(徴用工)は3月6日、韓国政府が第三者弁済を発表して一応の解決を見た。

尹大統領の訪日では、日韓の経済関係強化が主要課題となった。経済産業省は、19年にいわゆるホワイト国から除外した韓国を輸出管理のグループAに昇格させる検討をはじめており、韓国はWTOの紛争手続きを停止する。

日本政府はまた、5月19日から開催されるG7広島サミットに尹錫悦大統領を招待する考えを韓国政府に伝えている。G7はフランスの第20代大統領ジスカールデスタン氏が提唱した。第2次大戦後、世界秩序を維持するため国際連合が発足し、戦勝国5か国が常任理事国となって国連を牽引したが、東西冷戦の最中、旧ソ連と中国の度重なる拒否権の発動に業を煮やしたジスカールデスタン大統領が国連常任理事会に変わる組織として米国と英国に提案。米英仏に西独を加えることになったが、4か国中3か国が欧州となることを憂慮した米国が日本の参加を求めたことからG5として発足後、イタリアとカナダが加わった。

各国持ち回りの議長国がテーマを決め、オブザーバーを招待できることになっている。日本政府は2016年の伊勢志摩サミットに朴槿恵元大統領を招待したが、朴大統領はアフリカ歴訪と日程が重なるとして断った。日本は伊勢志摩サミットで北朝鮮問題を主要議題として取り上げた。G7参加国で北朝鮮に深い関心があるのは日本と米国の2か国のみで、北朝鮮問題が継続議題になれば当事国の韓国は次年度以降も出席することになっただろう。欧州と距離的に近く、歴史的にも関係が深いアフリカ各国はG7への出席となれば、朴大統領の歴訪日程変更に応じただろうし、アジアの一国の大統領より、G7に出席する大統領をむしろ歓迎する国が多かったはずである。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾包囲の大規模演習 実弾射撃や港湾封鎖訓

ワールド

和平枠組みで15年間の米安全保障を想定、ゼレンスキ

ワールド

トルコでIS戦闘員と銃撃戦、警察官3人死亡 攻撃警

ビジネス

独経済団体、半数が26年の人員削減を予想 経済危機
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中