最新記事

地球

地球の深度150キロに新たな層が検出される プレートテクトニクスの考え方に影響

2023年2月14日(火)18時30分
青葉やまと

溶融しているからアセノスフェアが柔らかいわけではない

チームはさらに、PVG-150と地殻変動との関連を調べた。直感的には、柔らかいPVG-150の層が広がる地域ほど、上部のプレートが活発に移動するようにも思える。

しかし、結果は意外なものだった。分析の結果、PVG-150の存在するエリアとプレートの動きには、相関関係がみられないことが判明した。フア博士はヴァイスに対し、溶融部分は「アセノスフェアの大域的な粘性に実質的な影響を与えていない」との見解を述べている。

では、プレートの移動を促しているとされるアセノスフェアは、なぜ柔らかいのだろうか。フア博士は「比較的軟弱なアステノスフェアの性質は、融解によるものではなく、固い岩石が物理的に変形することで生じている可能性が高いのです」と説明している。

溶融層と直接関係のないところで岩石に高い圧力が加わり、固体のまま物理的に変形しているのだという。

プレートテクトニクスのモデルの改善に貢献

CNNによると、論文の共著者であるブラウン大学のカレン・フィッシャー教授(地質科学)は声明を通じ、「この研究は、アステノスフィア(構造プレートの下にあり、プレートの動きを引き起こしている軟弱なマントルの層)がなぜ柔らかいかという本当の理由を理解するための基礎となります」と述べている。

フィッシャー教授はまた、今回の研究は「つまるところ、温度や圧力の変化など他の要因がアステノスフィアの強度に影響し、プレートテクトニクスが起きうるほど軟弱になるのだという事実を示す証拠となるものです」と語っている。

ヴァイスは今回の研究により、地球の新しい層が明らかになっただけではなく、プレートテクトニクスのモデルに影響を与える可能性があると指摘している。溶けた岩石がプレートの移動に与える影響が非常に限定的であることから、この層の存在を考慮せずにモデルを再構築し単純化できる可能性があるという。

溶解した層がこれまでの常識に反して世界中に分布していることに加え、プレートテクトニクスへの影響を同時に分析した研究となった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米・ウクライナ鉱物協定「完全な経済協力」、対ロ交渉

ビジネス

トムソン・ロイター、25年ガイダンスを再確認 第1

ワールド

3日に予定の米イラン第4回核協議、来週まで延期の公

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中