最新記事

韓国

きっかけは閑古鳥が鳴くレゴランド──知事の「徳政令」が引き起こした韓国の信用危機

A Theme Park Crisis

2022年11月24日(木)14時26分
ネーサン・パク(弁護士)


国内市場から海外に波及

CP発行の幹事会社を務めたBNK投資証券は、GJCのデフォルト(債務不履行)を宣言し、江原道に保証債務の履行を求めた。ところが道は約束は守ると遠回しに言うだけで、詳細を示さなかった。10月中旬、GJCのCPはジャンク債に格下げされた。

たちまち多くの地方自治体のプロジェクトがストップした。インフラ整備や公営住宅の建設といった大規模プロジェクトのために、地方債を発行している自治体は多い。GJCのデフォルトで、こうした自治体の保証は無価値であると市場は判断したのだ。

10月27日、韓国第3の都市・仁川の都市開発公社が、低所得層向け住宅を建設するための地方債発行を断念した。この市況では買い手がつかないとの判断からだった。

その影響は、総額2兆ドルを超える韓国の債券市場全体に及んだ。一般に社債は、地方債よりも安全性が劣ると考えられている。地方債に買い手がつかなければ、社債はもっと買い手を見つけるのが難しくなるのは当然の流れだ。

韓国で一番安全と考えられている韓国電力公社(KEPCO)の社債も例外ではなかった。KEPCOは10月25日に3年債と2年債を発行しようとしたが、3年債は売買が成立せず、2年債は目標の半分以下の金額しか調達できずに終わった。

その余波は海外にも及んでいる。韓国の中堅生保の興国生命保険は11月1日、ドル建て永久債5億ドル相当の期限前償還を見送ることにした。

一般に韓国企業は、このオプションを行使して、新たに発行する永久債への買い替えを促す。前回オプション行使が見送られたのは、世界金融危機のあおりを受けた09年だ。このため市場に、興国生命の経営に対する不安が高まり、債券価格が急落。他の韓国企業も連れ安となった。

韓国企業が国内でも国外でも資金調達に苦労する一方で、韓国は全面的な信用収縮に陥っている。政府の大幅な利上げで、金融機関は自動車ローンの新規販売を停止している。

古い家屋を高層マンションに建て替える再開発計画も多くが資金難でストップし、不動産業界に巨大なプレッシャーを与えている。

ロッテ建設は経営危機が囁かれており、10月20日にグループ企業のロッテケミカルから5000億ウォンの緊急融資を受けた。

政府は50兆ウォン以上の流動性供給を発表し、韓国銀行(中央銀行)も市場安定化のため42兆5000億ウォン相当の債券買い入れを発表した。韓国の5大商銀も最大95兆ウォンの流動性供給を約束した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

TSMC、熊本県第2工場計画先延ばしへ 米関税対応

ワールド

印当局、米ジェーン・ストリートの市場参加禁止 相場

ワールド

ロシアがウクライナで化学兵器使用を拡大、独情報機関

ビジネス

ドイツ鉱工業受注、5月は前月比-1.4% 反動で予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中