最新記事

血液型

「あなたの血液型は?」60歳未満で脳卒中を発症するリスクと血液型に関連性がある、との研究結果

2022年9月6日(火)20時20分
松岡由希子

血液型と60歳未満で脳卒中に発症するリスクとの間に関連性が...... busracavus-iStock

<研究チームが脳卒中と関連する遺伝子変異を調べた結果、ABO血液型を決定する遺伝子を含む染色体領域と60歳未満で脳卒中に発症するリスクとの間に関連性があることがわかった>

私たちの血液型は、60歳までに脳卒中を発症するリスクと関連性があるかもしれない。これを示唆する研究成果が2022年8月31日、医学雑誌「ニューロロジー」で公開された。

米メリーランド大学医学部(UMSOM)の研究チームは、北米、欧州、日本、豪州、パキスタンでの48の研究を通じて収集した18~59歳までの脳卒中患者1万6730万人とその対照群59万9237人のデータを用いて、遺伝的特徴と60歳未満の早期発症脳卒中に関するメタ分析を行った。

A型は早期発症型脳卒中のリスクが16%高い

研究チームが脳卒中と関連する遺伝子変異を調べた結果、ABO血液型を決定する遺伝子を含む染色体領域と早期発症脳卒中との間に関連性があることがわかった。

A型は他の血液型に比べて早期発症脳卒中のリスクが16%高く、O型はそのリスクが12%低かった。なお、B型は、年齢問わず脳卒中を発症する確率が約11%高い。

また、研究チームは、60歳以降に脳卒中を発症した約9300人とその対照群約2万5000人を比較した。その結果、晩期発症脳卒中と血液型との関連性は、早期発症脳卒中と血液型との関連性に比べてはるかに弱くなっていることがわかった。このことから、早期発症脳卒中と晩期発症脳卒中では発症のメカニズムが異なる可能性がある。

その原因は明らかになっていない

「A1型」で早期発症脳卒中のリスクが高くなった原因は明らかになっていない。研究論文の責任著者でメリーランド大学の神経科医スティーブン・キトナー教授は「血栓の形成に関与する、血小板、血管を覆う細胞、その他の循環タンパク質といった血液凝固因子が関係しているのかもしれない」と考察する。

今回の研究成果は、対象者のうちヨーロッパ系以外の祖先を持つ人の割合が約35%にとどまり、多様性にやや欠けている点で限定的ではあるものの、「遺伝的に決定された血液型が早期発症脳卒中にどのように関与しているのか」という問いを投げかけるものとして意義がある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中