最新記事

中国

北京早くも東京五輪を利用し「送夏迎冬」――北京冬季五輪につなげ!

2021年8月10日(火)10時49分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

これはちょうど、8月5日のコラム<7000人もの医療関係者を五輪に確保し、「国民の重症者以外は自宅療養」の無責任>で書いたように、日本の自民党の河村建夫議員(元官房長官)が7月31日に「五輪がなかったら、国民の皆さんの不満はどんどんわれわれ政権が相手となる。厳しい選挙を戦わないといけなくなる」と語ったのと同じ構図だ。すなわち

日本:マスコミを総動員して日本選手の活躍に熱狂させ、国民の目をコロナ感染からそらし、選挙に有利な方向に持って行こう!

中国:東京五輪を開催させ、コロナに批難の目が行かないように仕向けて北京冬季五輪を成功させよう(=北京冬季五輪ボイコットを言わせないようにしよう)!

という同じ構図で動いていることがお分かりだろう。その意味で菅政権と習近平は「共犯者だ」と言っても過言ではない。

8月8日、中国の「全民健身(国民運動)の日」に習近平のメッセージ

皮肉なタイミングとも言えるが、8月8日はなんと、中国にとっての「全民健身(国民運動)の日」だ。これは2008年8月8日の北京五輪にちなんで、翌2009年に設けられた祝日で、習近平は2016年10月25日に《健康中国2030計画》なるものを発布して、中国人民が健康を保つためにスポーツによって体を鍛えるように呼び掛けている。

CCTVは習近平の「全民健身の日」に関する以前の指示を引用して、その流れの中で前述の「送夏迎冬」を報道した。中国時間で夜7時43分から56分までの間(日本時間8時43分から56分頃)だったので、中国のネットでは「意味が分からない閉会式の余興」から、関心は一気に北京冬季五輪に移っていった。

日本時間の夜10時には全世界のCCTVを観ている者のスマホに冒頭のメッセージが発信されたので、中国国内外の東京五輪への関心もまた、一気に北京冬季五輪へと切り替わっていった。

このスイッチの切り替えは、いかにも東京五輪は北京冬季五輪のための通過点であり、北京冬季五輪を成功に導く「道具」であったかのようなイメージを与えた。

日本でデルタ株が爆発するのを中国は見抜いていた

8月7日のコラム<中国デルタ株感染拡大は抑え込めるか?>に書いたように、中国は日本がデルタ株のパンデミックを抑えきれないだろうということを見抜いていた。

8月9日のCCTV国際ニュースの東京五輪に関する報道は、専ら「東京五輪開催と同時に日本ではデルタ株感染が爆発している」ということに重点を置いていた。

それに比べて「中国はコロナ感染をコントロールしている」と言いたいのだろうが、南京禄口空港を出発点としたデルタ株の新規感染者は8月7日に<中国デルタ株感染拡大は抑え込めるか?>を書いた時点とかなり違ってきている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E

ビジネス

米国株式市場=ダウ終値で初の4万ドル台、利下げ観測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中