最新記事

韓国社会

韓国、コロナ感染急増が生み出した「モンスター」地下駐車場運動族

2021年2月23日(火)16時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

運動しない方が健康的?

オンラインコミュニティサイトの掲示板には「マンションの低層階に住んでいるが、駐車場出入り口側のベランダを1日開けておくと床に黒いほこりが目立つ。」というような空気の悪さを示す体験談も登場した。「駐車場で運動するぐらいなら、いっそしない方が健康に良いだろう」というような否定的な書き込みが目立つようになると、今度は「非常階段運動族」という新しい一派が登場する。

こちらも言葉そのままの意味で、マンションの非常階段を上り下りして有酸素運動をする人たちだ。これならば、車の行き来を気にせずに気軽に行える。館内に設置されている非常階段の場合は、換気の問題があるが少なくとも車の排気ガスは免れるはずだ。

駐車場や階段でのフィットネス程度では物足りないという人には「ホームト」をお勧めしたい。これは「ホーム・トレーニング」を縮めた言葉で、家に本格的なジム機具をそろえて、家の中で筋トレをすることである。

個人で購入できるダンベルなどはもちろん、最近ではコロナで運営が厳しくなり閉店してしまったジムが、筋トレの機具を中古で販売する機会も増えているという。懸垂機具、スクワットマシン、ショルダープレスなど本格的なマシンが安価で購入できると人気だそうだ。

マイホームジムの貸出でコミュニティも

さらに、買い取った機具をそろえて個人的な小さなジムが完成すると、自分だけで楽しむのではなく、なんとオンラインでシェアする動きが始まった。筋トレ仲間がトレーニング場所に困っていれば、自分の家を貸し出してシェアするのである。

韓国で人気のオンライン・フリーマーケットサイトであるボンゲジャントやタングン・マーケット(日本でいう「ジモティ」のようなサイト)をのぞいてみると、最近「ホームジム利用権」の出品者が目立つようになった。価格は1回の利用につき5千から1万ウォン(約500円~1000円)程度で販売されている。また、反対に「ソウル市内○○洞付近でホームジム求む」の利用者側の書き込みも増えている。

同じ筋トレ好きの人びとが、自宅に設置したトレーニングマシンを個人で楽しむだけではなくシェアすることにより、自然発生的に横の繋がりも生まれ始めている。これは、日本ではなかなか見られない韓国らしさと言えるかもしれない。

冬が来る前に近所の知り合いや親せきが集まって、キムチを一緒になって漬ける習慣や、仲の良い者同士が集まってお金を毎月出し合い、そのグループの一人にあげる「ケ・モイム」という集まりなど、現代では減少したとはいえ、韓国人はウリ文化と言われる仲間意識が強い。駐車場や非常階段で運動するだけのことだが「~族」という新造語を作り出し、お互いの仲間意識を高めているようにも見える。

コロナ感染防止対策で、様々な禁止事や制約が増えていき、1年たった今でもまだまだ息苦しい生活が続いている。しかし、個人個人で工夫をし、やりたいことを諦めない姿にたくましさを感じずにはいられない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド

ビジネス

米、エアフォースワン暫定機の年内納入希望 L3ハリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中