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ナワリヌイ毒物中毒にロシア「毒が入ったのはドイツに移送中」と示唆

Russia Media Spreads Theory Navalny Was Poisoned During Flight to Germany

2020年8月26日(水)17時45分
ブレンダン・コール

ナワリヌイ(写真)はプーチンを厳しく批判してきた Shamil Zhumatov Wisniewski-REUTERS

<プーチンの政敵ナワリヌイは「毒を盛られた」と言うドイツ側に対し、ロシア側が出してきた驚くべき理論>

ロシアの野党指導者で、現在ベルリンの病院で集中治療を受けているアレクセイ・ナワリヌイについて、ロシアの医療専門家が国営メディアで発言した。ナワリヌイはロシアからドイツに移送される途中で薬物を投与され、これが中毒症状の原因となった可能性があるという。

ナワリヌイは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を強烈に批判してきたことで知られ、現在は人工的な昏睡状態にある。ナワリヌイは飛行機で移動中に体調に異変が生じ、飛行機が緊急着陸したシベリアの街、オムスクで治療を受けていた。

世界各国の首脳からプーチンへの訴えが功を奏し、ナワリヌイはドイツの首都ベルリンにあるシャリテー大学病院に移送された。この病院で行われた検査により、コリンエステラーゼという酵素のはたらきを阻害する物質による毒物中毒の症状が出ていることが判明した。具体的な物質名までは特定されていない。

「毒物の影響か、体内のコリンエステラーゼのはたらきが阻害されていることが、いくつかの独立系試験所が行なった検査によって確認された」とシャリテー病院は声明で述べている。同病院はさらに、ナワリヌイが解毒剤のアトロピンによる治療を受けていることを明らかにし、いまだに重体ではあるが、命に関わる状態ではないと述べた。

ロシアと薬がかぶった?

これに対して、ロシア保健省に所属する医療専門家、イゴール・モルチャノフはロシア国営のタス通信の取材に応じ、当初ナワリヌイの診察にあたったオムスクの医師たちが、異常な興奮状態や発汗といった毒物による中毒症状を見逃すとは考えにくいとの見方を示した。

ロシア継続的専門教育医学アカデミーで麻酔学科のトップを務めるモルチャノフは、オムスクからドイツに飛んだ飛行機の中でナワリヌイは薬物の投与を受け、これがコリンエステラーゼのはたらきを阻害する物質による中毒症状、というドイツでの検査結果につながった可能性があると述べた。

「彼らがこの患者を診察したのは、患者が(オムスクで)集中治療室に入れられ、多数の薬物を投与され、移送された後のことだ。この段階で再び似たような薬物が多数注入されており、これが(コリンエステラーゼを阻害しているような)痕跡を残したのかもしれない」と、モルチャノフは付け加えた。

毒物をもられた症状を示しているというドイツでの診断結果は、オムスクの病院からの移送を求めたナワリヌイの支持者や家族からの要望に正当性があったことを裏付けるものに見える。支持者や家族は、ナワリヌイがロシアでは公正な治療を受けられないのではないかと恐れ、今回の真相が隠蔽されかねないと危惧していた。支持者や家族は、今回の件は政治的動機による攻撃だと主張している。

<関連記事>[映像] ロシア、反プーチンの野党指導者ナワリヌイが意識不明 毒物を盛られたか
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