最新記事

中国

米中どちらに軍配?WHO総会で習近平スピーチ、トランプ警告書簡

2020年5月22日(金)15時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

トランプ大統領と習近平国家主席 Kevin Lamarque-REUTERS

18日、WHO総会オンライン会議で習近平がスピーチしWHOの調査を承諾し、2年間で20億ドル拠出するとしたのに対して、トランプはWHOが30日以内に中国寄りを改善しなければ拠出金を停止し脱退する可能性を示唆した。

習近平のスピーチのために関係国首脳に声掛け

これまでWHO総会に関係国首脳がスピーチをするという例はあまり見られない。

しかし今年は習近平のスピーチを可能ならしめるために、敢えて関係国首脳にビデオメッセージの形で開会の挨拶を冒頭に盛り込んだとしか解釈できない。

開会の辞を述べたのは順番に以下の首脳たちである。

   スイス大統領:シモネッタ・ソマルーガ
   国連事務総長:アントニオ・グテーレス
   中華人民共和国国家主席:習近平
   フランス大統領:エマニュエル・マクロン
   韓国大統領:文在寅
   ドイツ首相:アンゲラ・メルケル
   バルバドス首相:ミア・モトリー
   南アフリカ共和国大統領:ラマポーザ
   WHO事務局長:テドロス・アダノム

この顔ぶれを見て、何を推測することができるだろうか。

先ず、「おやっ?」と思うのは、これまでは各国首脳がこのように揃って開会の挨拶をするなどということはなかったということだ。

なのに、なぜ今年はかくも多くの大国を含めた関係国首脳が開会の挨拶をしたのだろうか?

常識的には二つのことが考えられる。

一つは戦後初めての大規模なパンデミックが起きていること。

二つ目は、まだそのパンデミックが収まっていないために、各国首脳が開催地まで足を運ばなくても、ビデオメッセージを送れば済むからだということだ。

これは弁解しやすい理由になるだろう。

実はトランプ大統領は断るだろうことが計算されていた

しかし、納得いかないのは世界最大の大国でWHOへの拠出金も最大であるアメリカのトランプ大統領の冒頭あいさつがないことである。

中国の数千年にわたる戦略を心得ている者なら、「ピン!」と来るはずだ。

手順としては、先ず中国のWHO関係者がテドロス事務局長(あるいはその部下)に以下のように持ち掛ける。

1.習近平がWHOでスピーチできるチャンスを作って欲しい。なぜならアメリカは習近平とテドロスが全人類に被害をもたらしたと攻撃しているので、二人で対抗していこう。

2.そのためには、先ずトランプにビデオメッセージを送って欲しいという依頼状を出すことだ。トランプはあれだけWHOを攻撃しているので、必ず断ってくるだろう。

3.それを見込んで、習近平を含む西側諸国の首脳や発展途上国の首脳などに依頼状を出す。国連のグテーレス事務総長にも依頼して、非常に平等に声がけしている形を創り上げる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中