最新記事

食と農

確かにデンマークから先進的に始まっている──これからの食と農のスタイル

2018年10月17日(水)17時30分
松岡由希子

有名レストランのシェフが作った農園 photo:松岡由希子

<コペンハーゲンのレストラン「ノーマ」で一躍有名になったデンマークの新しい食の形。政府もこの流れを推進し、「ワールドフードサミット」を開催し、新たな雇用創出と美食の国としての確立を目指している...>

有名シェフが農園を作って...

2018年8月末、デンマークの首都コペンハーゲンから約45キロメートル西のライラ市にある農園「ファーム・オブ・アイデアズ」では、収穫の時期を迎えようとしていた。この農園は、コペンハーゲンの一流レストラン「レレ」を主宰するシェフのクリスチアン・ブリージ氏が2016年に創設した"シェフによるシェフのための農場"だ。

畑では、少量多品種で野菜を有機栽培し、牧草地では乳牛やブタ、ニワトリを放牧している。苦味がなくそのまま食べられるケール、果物のように甘いビーツ、ゴマのように香ばしい味のルッコラなど、いずれの野菜も、味や香りが非常に豊かで、それだけで立派なごちそうになりそうなものばかりだ。ここで収穫された野菜や家畜からの生乳、卵などは、ブリージ氏が主宰するコペンハーゲン市内の4軒のレストランで食材として利用されている。

レストラン「レレ(Relæ)」

181016newsweek_matsuoka1_2.JPG

農園「ファーム・オブ・アイデアズ」、早朝に摘み取られた野菜がレストランで出される photo:松岡由希子

有名レストラン「ノーマ」が牽引し、多くの人材を輩出

デンマークは、近年、新たな美食の国として世界的に注目されている。有機栽培などの持続可能性に配慮した手法で栽培された地元の旬な新鮮食材を生かし、シンプルながらも、味のバランスや香り、食感に革新性があふれる「ニューノルディック・キュイジーヌ」は、美味しくてヘルシーな食を好み、環境意識も高いデンマーク国内外の美食家たちから人気を集めてきた。

この新たなスタイルを牽引してきたのが、プリージ氏の古巣でもあるコペンハーゲンの有名レストラン「ノーマ」だ。自ら農園を運営し、郊外の農家や食品加工メーカーとコペンハーゲンの一流レストランをつなぐ役割も担うプリージ氏や、シェフの高度な調理技術を学校給食に応用し、子どもの食育につなげるプロジェクト「ブリゲイド」の創設者ダニエル・ガスティ氏ら、多方面で活躍する優秀なシェフを数多く輩出している。

また、「ノーマ」の共同経営者でシェフのレネ・レゼピ氏は、2011年以降、シェフやレストラン、農家、起業家、研究者らのグローバルコミュニティ「マッド」を通じて、持続可能性に配慮され、ヘルシーで美味しい食の普及に向けたムーブメントをデンマークから世界に広げようと取り組んでいる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

AIブーム、崩壊ならどの企業にも影響=米アルファベ

ワールド

ゼレンスキー氏、19日にトルコ訪問 和平交渉復活を

ワールド

中国の渡航自粛、観光庁長官「影響を注視」 10月は

ワールド

北朝鮮、米韓首脳会談の成果文書に反発 対抗措置示唆
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中