最新記事

地震

北海道地震、最大震度7で死者7人 阪神上回る295万戸停電で経済活動に大きな打撃

2018年9月6日(木)17時40分

地震の発生した北海道は一時全域が停電となった。写真は陸上自衛隊の安平駐屯地の事務室 REUTERS

北海道で6日未明に発生した地震は、震源地近くの厚真町で最大震度7を観測。大規模な土砂崩れや家屋倒壊を引き起こし、政府はこれまでに7人の死亡を確認した。北海道全域で続いた停電は午後になり一部が解消しつつあるものの、復旧にはなお時間がかかる見通しだ。

地震は午前3時08分ごろに発生。震源は胆振地方中東部で、震度7を観測した厚真町や、震度6弱のむかわ町では大規模な土砂崩れや家屋倒壊などが発生し、被害が集中した。気象庁によると、震度7を観測するのは2016年の熊本地震以来となる。

大規模停電が発生

停電の影響は一時295万戸に及んだ。1995年に起きた阪神淡路大震災の260万戸を上回る規模で、広い範囲で社会・経済活動に影響が出ている。

北海道電力は同日午後に砂川火力発電所での発電を再開し、旭川市、札幌市やその周辺で電力供給が始まった。ただ、4基の水力発電と砂川の計55万キロワットは、道内全体の電力需要の約15%にとどまる。

世耕弘成経済産業相は、道内全域での復旧には1週間以上かかるとの見通しを示している。

北海道電力では、主力発電所である苫東厚真火力発電所で、タービン火災の発生やボイラーの損傷が判明している。

一方、北海道電力泊原発では一時、外部電力が喪失。非常用電源で使用済み核燃料プールの冷却を継続した。その後、外部電力を回復し、プールの冷却に支障がなくなった。

停電で企業・金融機関・交通に影響

停電の影響で、道内の主要な工場で生産を停止した企業も多い。サッポロホールディングスによると、サッポロビール北海道工場に建物の被害はなく人的被害もないが、停電のため製造ラインを停止し、復旧の見通しも未定としている。

金融機関にも影響が出ている。北海道銀行は、予備電源を利用できる本店と27支店は営業しているが、その他の113支店は営業できずにいると発表した。予備電源が使用できる一部のATMは利用可能だが、その他のATMは利用できなかった。

東京証券取引所は、地震と停電に伴って、朝方から一時停止していた札幌証券取引所での全銘柄の売買について、終日停止した。明日以降の予定は現時点で未定としている。

交通機関への被害も多い。新千歳空港はターミナルビルの被害で終日閉鎖される。JR北海道や札幌市内の地下鉄をはじめ道内の全鉄道が運行を停止した。

安倍晋三首相は同日朝、人命第一で政府一丸となって災害対応に当たると強調。自衛隊を2万5000人体制で北海道に派遣すると述べた。

政府は首相官邸内の危機管理センターに官邸対策室を設置。合わせて同日朝から関係閣僚会議も開催し、安否不明者の捜索や被害対応に当たった。

(田巻一彦 編集:田中志保)

[東京 6日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240618issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年6月18日号(6月11日発売)は「姿なき侵略者 中国」特集。ニューヨークの中心やカリブ海のリゾート地で影響力工作を拡大する中国の「ステルス侵略」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

最新のガザ提案、「全目標達成可能に」とイスラエル当

ワールド

ロシアとベラルーシ、戦術核演習の第2段階開始

ワールド

マラウイ副大統領搭乗の軍用機発見、全員死亡

ワールド

ドイツ・ウクライナ財務省、戦後復興支援の共同宣言に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 3

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬で決着 「圧倒的勝者」はどっち?

  • 4

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 5

    たった1日10分の筋トレが人生を変える...大人になっ…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 7

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 8

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕…

  • 9

    イスラエルに根付く「被害者意識」は、なぜ国際社会…

  • 10

    「私の心の王」...ヨルダン・ラーニア王妃が最愛の夫…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 3

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車が、平原進むロシアの装甲車2台を「爆破」する決定的瞬間

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 7

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 8

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 9

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中