最新記事

映画

『シェイプ・オブ・ウォーター』聖なるモンスターと恋に落ちて

2018年3月3日(土)15時00分
エミリー・ゴーデット

「特定の路線にこだわるつもりはない。スペイン内戦下を舞台にしたおとぎ話(『パンズ・ラビリンス』)や、同じくスペイン内戦時代の幽霊の話(『デビルズ・バックボーン』)、メキシコを舞台にした吸血鬼の物語(『クロノス』)を映画にしたこともある」

「SF作家のシオドア・スタージョンは、あらゆるものの90%はクズだから、SFも90%はクズだと言った。いわゆるスタージョンの法則だ。デル・トロの法則は、あらゆるものの10%は偉大だというものだ」

デル・トロは安易なホラー映画に興味はない。彼が描きたいのは、もっと陰湿なホラーだ。「私が大人の男として怖いと思うのは、イデオロギーが社会を分断する力だ。人を(『嘘つき』『バカ』など)一語で表現してしまうと、その人たちを簡単に傷つけたり、無視したりできるようになる。移民問題も性差の問題も、憎しみは増殖する一方で、理解を生むことはない」

そんなデル・トロも、楽観的な『シェイプ・オブ・ウォーター』を撮ったことで、1年ほど休みを取ることを考えるようになったという。今年は読みそびれていた小説を読み、「夕暮れを見たい」と言う。その一方で、チャック・ホーガンと小説を書いているほか、ネットフリックスでアニメ映画3本を製作することも決まっている。

これでは休暇どころか、今年も大忙しのようだが......。だが本人は、仕事を「4つだけ」に絞ることで、人生を楽しむ余裕ができるはずだと笑う。

「40歳を過ぎると、自分の墓碑を思い描くようになる」と、デル・トロは言う。「私の墓碑にはおそらく『ギレルモ・デル・トロ、ここに眠る。生きて、愛して、映画を何本か作った男』と書かれるだろう。映画は既に何本か作ったから、今度は人生を楽しまないと。このままでは予定どおりの墓碑にならない」

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

[2018年3月 6日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領と外相搭乗のヘリが山中で不時着、容体懸

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中