最新記事

メディア

GQの表紙では女性だけがおへそを出す

2017年12月8日(金)17時20分
メアリー・ケイ・シリング(本誌記者)

GQの表紙でへそを出したガドット(左)と下着姿のウィリアムズ GQ

<女性にだけ肌を露出させるのは、もういいかげんにやめるべき>

セクハラ騒動がアメリカ中に広がるなか、勇気を持って告発する人たちには拍手を送りたい。

しかし、肝心なのはこの後だ。本当の解決策はどこにあるのか。女性、男性、そして従来の性別で自らを区分しない人々が、みんな平等に、尊厳を持って扱われるようになるにはどうすればいいのか。報復を恐れずに性差別的な行動や考え方を拒否できる日は、いつ訪れるのか。

性差別をなくすには法律をどう変えるべきか。子供たちが旧来の考え方に染まらないようにするにはどうすればいいか。職場や政府、学校をどう変えるべきか――これらの問題に知恵を出し合って取り組む必要がある。

まずは小さな問題から考えてみたい。男性誌GQの米国版が先頃、17年の「今年の人」を発表した。人種差別に抗議して国歌斉唱の際に片膝をついたプロフットボールNFLの選手コリン・キャパニックは「シチズン・オブ・ザ・イヤー(今年の市民)」に選ばれた。

自身のトーク番組で鋭い政権批判ネタを続けたコメディアンのスティーブン・コルベアは「バッド・オンブレ・オブ・ザ・イヤー(今年の悪役)」に、NBA選手のケビン・デュラントは「チャンピオン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。そして「ワンダーウーマン・オブ・ザ・イヤー」になったのが、映画『ワンダーウーマン』で主役を演じた女優ガル・ガドットだ。

この号は、4人それぞれの写真を使った4種類の表紙が作られた。ここで問題なのは、4人のうちガドットだけが肌を露出していること。男性3人は首元まで覆ったきちんとした服装だ。

細かい話だと思えるかもしれないが、社会を見る目はこういうことが積み重なって育つ。私たちは子供の頃から、こうした価値観を帯びた空気を無意識のうちに吸い込んでいる。

ガドットは、この衣装は嫌だと言うこともできたかもしれない。しかし雑誌の仕事を長くやってきた私の経験から言えば、撮影現場では指示どおりにやったほうがいいという空気が出来上がっていくのだ。

ガドットの衣装も写真もわいせつなものではない。だが、この衣装を着ている彼女はパワフルな女性には見えない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ

ワールド

アングル:トランプ政権で職を去った元米政府職員、「

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中