最新記事

全固体電池の「点火」に挑む日特、EV時代生き残り図る部品各社

2017年12月29日(金)09時53分

12月28日、スパーク(点火)プラグ最大手の日本特殊陶業(日特)が電気自動車(EV)向け次世代電池として期待される「全固体電池」の開発を加速している。写真は日本特殊陶業の彦坂氏。名古屋で12日撮影(2017年 ロイター/Naomi Tajitsu)

スパーク(点火)プラグ最大手の日本特殊陶業(日特)<5334.T>が電気自動車(EV)向け次世代電池として期待される「全固体電池」の開発を加速している。各国の環境規制強化で、完成車各社だけでなく、エンジン関連部品メーカーもEVへの対応を迫られており、ガソリン車で使う点火プラグの需要減は時間の問題。「(点火プラグは)必ずいつかピークアウトする」――。日特の小島多喜男執行役員はロイターの取材でこう危機感をにじませた。

将来に備えた経営課題

自動車各社の将来戦略は急速にEVに傾斜しているものの、実際はコストや航続距離、充電時間など普及を阻む課題はなお山積みだ。新興国ではエンジン車の需要が当面続くとの見方もある。特に日特が世界シェア40%を持つ点火プラグはアフターマーケット需要もかなり多く、当分はなくならないとみられている。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の岩井徹シニアアナリストは、EV化が急に進んでも、点火プラグなどガソリン車のアフターパーツ需要はすぐには消えないとし、「日特はまだ時間的猶予がある」とみる。

ただ、同氏によれば、日特の現在の売上高の84%を占める部品がEVによって不要になる。また、同社の利益の約6割は点火プラグを中心としたアフターパーツに依存しており、こうした点火プラグ事業への依存度の高さが同社の先行きへの不安につながっている。

同社が全固体電池の研究開発を始めたのは2010年ごろ。同年には日産自動車<7201.T>がEV「リーフ」の初代を発売したものの、当時はまだEV普及に懐疑的な見方が多かった。しかし、日特は「将来に備えて早くから手を打っておく」(小島氏)必要があると判断、EVの主要部品である電池への取り組みを始めた。

日特はEV用へのシフトを「大きな経営課題ととらえている」(同氏)。  

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中